研究課題
ホメオボックス(HOX)遺伝子は形態形成や細胞分化に重要な働きを持つDNA結合タンパク質をコードする遺伝子である。HOX遺伝子群はゲノム上にクラスターを形成して存在しており、発生過程ではその時空間的な発現パターンが緻密に制御されている。一方で、HOX遺伝子の発現異常が様々な病態と深く関わっていることが知られているが、その発現制御のメカニズムは依然として不明な点が多い。本研究では急性骨髄性白血病(AML)をはじめとする白血病で見出される核膜孔構成因子(ヌクレオポリン)融合遺伝子産物の機能解析を通して、HOX遺伝子発現制御の分子メカニズムの解明を目指す。本年度は、ヌクレオポリン融合遺伝子を発現する複数のヒト白血病細胞株を入手し、ヌクレオポリン融合遺伝子産物の細胞内局在、HOXクラスター遺伝子の発現、ゲノムDNA結合部位等について比較・解析を進めた。その結果、ヌクレオポリン融合遺伝子産物の種類によって、これらのパターンが異なることがわかった。特に、HOXAおよびHOXBクラスター領域に集積するヌクレオポリン融合遺伝子産物が存在することが明らかとなった。また、プロテオーム解析によりヌクレオポリン融合タンパク質と相互作用する因子を同定した。これらの中にはクロマチン制御因子等が含まれており、その相互作用の生理的意義について解析を進めている。さらに、蛍光タンパク質と融合したヌクレオポリン融合遺伝子の安定発現細胞株を樹立して、白血病治療薬のハイスループットスクリーニングに向けた予備実験を進めている。
2: おおむね順調に進展している
複数のヌクレオポリン融合遺伝子産物の機能解析を行い、それぞれに特有の性質を見出すことが出来た。また、ハイスループットスクリーニングに向けた基盤的研究を進めることが出来た。
今後、結合因子の解析を進めヌクレオポリン融合タンパク質によるHOX遺伝子活性化メカニズムを明らかにする。また、様々なヌクレオポリン融合遺伝子産物について、引き続き機能解析を進める。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) 図書 (4件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
Organic & Biomolecular Chemistry
巻: 16 ページ: 7530~7530
10.1039/c8ob90140f
巻: 16 ページ: 4456~4463
10.1039/c8ob00706c
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 115 ページ: E1214~E1220
10.1073/pnas.1719921115
Proceedings of the Japan Academy, Series B
巻: 94 ページ: 259~274
10.2183/pjab.94.018