研究課題/領域番号 |
17H03680
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
幸田 尚 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60211893)
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研究分担者 |
川崎 佑季 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60746890) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発生・分化 / エピジェネティクス / 精子 / ヒドロキシメチルシトシン |
研究実績の概要 |
本研究は、ほ乳類における精子ゲノムのシトシン修飾の変化が次世代の個体に伝わる可能性を検証することを目的としている。特にメチルシトシンのみならずヒドロキシメチルシトシンも含めて網羅的に解析することで、個体レベルでの経世代的なエピゲノム修飾についての新しい知見を得ることを目指す。このため、マウスを用いて父親の生理的な条件による精子のエピゲノム修飾の変化や、精子形成過程でのシトシン修飾の変化を我々が新たに開発したメチルシトシン、ヒドロキシメチルシトシンを同時に1分子ずつで解析する画期的な手法であるEnIGMA法をゲノムワイド解析が行えるよう改良を加え、これを用いて網羅的に解析することを目的としている。これまで、EnIGMA法について改良を重ね、ゲノムワイド解析への適応が可能となるEnIGMA-seq法として技術的な目処を立てることに成功した。また、次世代シーケンサーによる解析から得られるデータを用いて全てのCpGについてメチルシトシンとヒドロキシメチルシトシン、非修飾シトシンの同定を行うパイプラインを構築した。そこで、現在実際にマウスの精子において標準的なメチルシトシン、ヒドロキシメチルシトシンの全ゲノムプロファイル取得を試みている。 今後、受精後の初期胚においてヒドロキシメチル化を中心としたゲノムの非対称な修飾とそのダイナミックな変化に伴う遺伝子発現調節を解析することで精子ゲノムのシトシン修飾の変化が次世代に伝達する可能性についての可能性を明らかにできると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、研究代表者が開発したメチルシトシンとヒドロキシメチルシトシンを同時に同定解析する手法であるEnIGMA法について改良を重ね、ゲノムワイド解析への適応が可能となるEnIGMA-seq法として確立するために検討を行ってきた。その過程で現有のdropletPCR装置をバージョンアップして増幅のモニターを蛍光物質のEverGreenを用いて可能にする計画であったが、装置のバージョンアップのサービスが終了したことが判明し、この手法による増幅のモニターを行うことができなくなった。そのためTaqManprobeを用いてbisulfite反応の産物のPCRを現有のdropletPCR装置で確認できるよう、用いる配列を新たに設定し直すなどの検討を行って条件検討を可能とすることができた。したがって、初年度の研究の遅れを取り戻すことができた。さらにこの改良の結果を基盤として用いることで、EnIGMA法の改良を進め、ゲノムワイド解析への適応を行うEnIGMA-seq法として実験系の改良を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在EnIGMA-seqを用いてマウスの精子ゲノムの標準的なメチルシトシン、ヒドロキシメチルシトシンの全ゲノムプロファイル取得を試みている。ゲノムワイドの解析においてEnIGMA-seqが十分な検出精度を持っているかの検証を行うとともに、必要に応じて解析精度の向上を行う。今後ゲノムワイドの解析の結果、成熟精子においてhmCが集積していると考えられる部分について、雄マウスの栄養条件や週齢など様々な生理的条件を変化させた場合にこれらの部位のシトシン修飾が影響を受けるかを解析を行うことで、精子ゲノムのシトシン修飾の変化が次世代に伝達する可能性について明らかにする。
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