研究課題
本研究は、ゼブラフィッシュの体表模様を形成する色素細胞、黒色素胞と黄色素胞をターゲットとし、これらの細胞が細胞間相互作用に基づき細胞自律的にパターンを形成する過程に起こる分子メカニズムの解明を目的としている。これまでに変異体解析やNGS解析を行い色素細胞に発現する遺伝子の解析を行ってきた。その中で特に、細胞間相互作用の分子実態としてギャップ結合とNotch-Deltaに注目している。本年度は、2種類の色素細胞間に存在するギャップジャンクションネットワークに関する詳細な解析結果を論文としてまとめ報告した。この中で、mRNA発現レベルで黒色素細胞、黄色素細胞に発現するコネキシン遺伝子は、connexin41.8とconnexin39.4のみであり、他の約40種類のコネキシンは発現していないことを示した。また、体幹部と鰭、それぞれに存在する縞模様は、パターン形成メカニズムが異なるのではないという異論に対し、色素細胞それぞれにおいても2種類のコネキシンのみが発現していることを示した。更に、ダブルノックアウト個体を用いたレスキュー実験により、黄色素胞に必要なコネキシンはconnexin41.8のみであること、黒色素胞に必要なコネキシンはconnexin39.4のみであることを示した。ただし、connexin41.8はconnexin39.4の安定化に何らかの作用を持つことが示された。これらの結果をもとに、パターン形成の中核となる、黄色素胞と黒色素胞間に存在する活性化シグナルに関して、黒色素胞に発現するconnexin41.8とconnexin39.4からなるヘテロメリックヘミチャネル、および黄色素胞に発現するconnexin39.4、更に黒色素胞の静止膜電位形成にかかわるspermidineの組み合わせにより、方向性を持ったシグナル伝達経路が形成されているというモデルを示した。
2: おおむね順調に進展している
Gap junction - Spermidine による活性化シグナル経路の形成を証明するため、パッチクランプ法による電気生理解析を行いconnexin39.4からなるギャップジャンクションがポリアミン依存的な整流性を示すことを示した。しかし研究の過程で、黒色素細胞に発現するconnexin41.8がconnexin39.4の機能の維持に関与していることが示唆されており、今後、connexin39.4とconnexin41.8によるheteromeric gap junctionに関するポリアミン感受性に関する解析を行う必要がある。現段階において、connexin39.4の哺乳類細胞における膜局在・可視化には成功しているが、connexin41.8の膜局在・可視化はできていない。しかし一方で、黒色素細胞においてはconnexin39.4とconnexin41.8の両方が発現していること、両者は細胞内でヘテロメリックギャップジャンクションを作っていること、更には、connexin39.4がconnexin41.8の細胞膜へのリクルーターとして機能していることが明らかになり、今後、ヘテロメリックギャップジャンクションの電気生理解析を行い、ギャップジャンクションの整流性を解析する計画である。
Connexin41.8およびconnexin39.4のin vivo, in vitroにおける可視化の条件検討の過程で、connexin41.8のC末細胞内ドメインがconnexin39.4による膜移行へのリクルートに必要であることが明らかになった。このことは、魚類系統特異的に存在するconnexin39.4の本来の機能解明への手掛かりになると考えられる。本年度は、野生型とconnexin39.4変異体間で、single cell transcriptome解析を行い、connexin39.4に依存した細胞間相互作用に基づくパターン形成の解明を目指していく。Connexin41.8、connexin39.4のドメイン解析を進めており、C末ドメインに由来する両者の分子間相互作用の解明を目指す。
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Science Advances
巻: 6 ページ: eaax3157
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Development
巻: 146 ページ: dev181065
doi:10.1242/dev.181065