両生類の四肢再生では神経が不可欠な役割を果たすことが明らかであったが、確実な分子実体が明かされることはなかった。四肢再生において神経は「再生の開始」と「パターンの再形成」を制御している。我々は、該分野の長年の悲願であった「再生の開始」を支配する神 因子( FGF+BMP)の同定に成功した。しかし尚、「パターンの再形成」を制御する神経因子はいまだ謎である。本研究では、これまでに明らかにした成果を基に、パターンの再形成を支配する神経因子の同定を試みた。さらに、同定する因子を操作することで、再生不全動物および再生不能動物において四肢再生の誘導と完遂を目論んだ。 再生不能動物と再生可能動物との比較解析から7つの遺伝子を特定し、鋭意解析を進めている。また、再生の過程においてパターン形成に重要な役割を果たすパターン形成遺伝子の活性化がどのように起こるのかについて知見を得た。一連の研究成果の中でパターン形成を促す際に働く神経因子の操作単体では完全な器官再生反応を促すことは難しいことが明らかになった。パターン形成を促す因子としてもFGFとBMPが重要な役割を果たすことが明らかになったが、やはり再生不能動物においてはこのインプットに対する応答性を欠いていた。この応答性は再生開始期に細胞に付与されるものと考えられる。したがって、完全な再生を目指すために、再生開始期に起こるリプログラミングプロセスに焦点を当てて今後の研究を展開することにした。本研究内では、再生不応部位に期間再生反応を促すことと、再生に向けたパターン形成に必須な細胞群の供給メカニズムを明らかにすることができた。
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