研究課題/領域番号 |
17H03689
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
藤森 俊彦 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 教授 (80301274)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 体軸 / マウス / 子宮 |
研究実績の概要 |
胚の前後軸と子宮の軸との関連についての報告があるが、発生のどの段階からその関係が見られるか、なぜその関係がみられるようになるかは未解明である。マウス胚の前後軸形成に、子宮及び胚体外組織が能動的な役割を果たしている可能性を検証している。 形態的に前後が明確である7.5日目の子宮に関しては、子宮の長軸と胚の前後軸との関係を定量的に解析した。6.5日目の子宮についても同様の解析を進めた。早い時期への展開の為にAVEおよび原腸陥入部で発現するマーカー遺伝子に蛍光タンパク質をつないだトランスジェニックマウスを3ライン検証した。蛍光タンパク質の発現量が弱く、組織内で正確に胚軸の判定を行うことは難しいと判断し、別の系統のマウスを導入することを決定した。 モノクローナル抗体のスクリーニング 着床から5.5日目までの子宮及び胚体外組織において局所的に発現する候補は得られなかった。それより早い時期に限局する分子を検索する為に、切片の染色、子宮から取り出した胚を用いて観察した。後期の胚盤胞で偏った染色パターンを見せるクローンを見いだせた。抗原となる分子を免疫沈降、MS解析によって同定中である。 光刺激によって組換えを誘導できるCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウス系統を得た。R26遺伝子座に挿入されたfloxのH2BEGFPおよびH2BmCherryは、誘導効率を検討するのに適当でないことが判明した。そこで、R26遺伝子座に挿入されたfloxのlyn-Venusを用いた組換え活性の検討を進め、複数の系統において、光依存的に組換えの誘導が可能なことが分かった。これと平行して、細胞輪郭を標識できるトランスジェニックマウス、胚盤胞の時期までに確率的に組換えがおきるEIIa-Creを用いた細胞系譜解析を行った。細胞層によって明確な細胞の挙動の違いを明らかにし、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに開発した組織切片から組織の3次元再構築をする技術を用いて、形態的に前後軸が明確な受精後7.5日目の子宮の観察を行い、形態的に前後軸が見られ始める6.5日目の子宮についても観察を進めた。形態観察を迅速に進める為に固定後PTAで染色した子宮をマイクロCTを用いて観察する手法についても試行した。この項目に関しては、計画していなかった解析法を導入するなど、順調に進捗している。 更に、前後軸をマーカー遺伝子の発現から判定する為に、マーカー遺伝子の発現制御下に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを導入し、観察の検討中である。当初計画していたトランスジェニックマウスでは、見られる蛍光タンパク質の発現が弱く、研究はやや難航していたが、新たに別の系統のマウスを導入することを決定し、問題の解決を目指している。 分子の検索に用いるモノクローナル抗体の発現解析を進めた。モノクローナル抗体を用いる解析を担当する研究協力者の都合により研究に遅延が生じたが、その後目標とする点まで進めることができた
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を継続し、各項目について更に研究を進める。 子宮軸と胚軸の関係については、既に得られている画像データを定量的に解析し、どのステージから関係が確定するか明らかにする。この際に胚の軸を3次元的に解析する技術が必要となることから、可視化、定量化についての技術開発も進める。また、マーカー遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いた実験を7.5日の胚を用いてマーカーとしての有用性を確認した後に進める。マイクロCTを用いた観察も継続して進め、胚の軸を判定する指標を明確にすることを目指す。 胚体外組織において偏った発現の見られるモノクローナル抗体の解析については、胚からの免疫沈降は量的な問題があるため、成体、後期胚においてこのモノクローナル抗体を用いて染色される組織を検索する。 光遺伝学を用いた細胞系譜解析については、Creとfloxのレポーター遺伝子の両方を持つマウスからES細胞を樹立し、in vitroでの光刺激の詳細な条件検討を進める。
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