研究課題
セルロース分子鎖を繋ぎ変え、セルロース微繊維どうしを共有結合で連結する新奇な酵素活性が植物細胞壁中に存在することを申請者は2016年に実証し、セルロース繋ぎ変え酵素(以下CETと略す)と命名した。CETの発見は「セルロース微繊維間には共有結合による連結が無い」とする旧来の定説を覆し、陸上植物細胞壁モデルとその機能の見直しを迫るものである。本研究の目的は、CETの解析を通して、細胞成長制御における細胞壁の機能を、 CETの酵素機能や細胞壁構築・再編の視点から再検証し、発生制御における細胞壁の新規な機能の解明を目指す点にある。2017年度は、CET活性を持つことを実証済みのシロイヌナズナのAtXTH3と類似機能を持つと予想されるXTHホモログを探索し、AtXTH1, AtXTH2, AtXTH11の4つの遺伝子を推定し、これらに焦点を当てて解析を進めた。AtXTH1とAtXTH2については、それぞれの遺伝子機能欠損体であるT-DNA挿入ラインを解析したが、いずれも巨視的な形態は野生型と区別がつかなかった。また、AtXTH1 とAtXTH 3およびAtXTH3 とAtXTH 3のそれぞれの二重機能欠損変異体も、野生型と同様の形態を示した。もう一つのホモログであるAtXTH11の機能欠損変異体であるT-DNA挿入ラインは得られていないので、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集により、2エキソンに1 bp の塩基が挿入され、蛋白質翻訳時にフレームシフトを引き起こす系統を作成した。セルロース微繊維と相互作用する分子であるキシログルカンを合成できないxxt1xxt2突然変異体を用いたAtXTH3機能解析も進めた。 現在はxxt1xxt2xth3三重変異体の作成が完了し、xxt1xxt2との詳細な表現型の比較を進める段階にきている。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた研究支援者の採用が事情により不可能となったため、研究計画を一部変更したことにより、当初の計画を次年度に伸ばさざるをえなくなっが、それ以外は予定通り進んでいる。
CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集により作成に成功したAtXTH11遺伝子の機能欠損変異体を用いて、同遺伝子の機能解析をする。また、セルロース微繊維と相互作用しながら細胞壁構築に重要な機能を担うキシログルカンの合成能を欠損したxxt1xxt二重変異体を用いて、XTH変異体の機能解析を進める。
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