研究課題
セルロース分子鎖を繋ぎ変え、セルロース微繊維どうしを共有結合で連結する新奇な酵素活性が植物細胞壁中に存在することを申請者は2016年に実証し、セルロース繋ぎ変え酵素(以下CETと略す)と命名した。CETの発見は「セルロース微繊維間には共有結合による連結が無い」とする旧来の定説を覆し、陸上植物細胞壁モデルとその機能の見直しを迫るものである。本研究の目的は、CETの解析を通して、細胞成長制御における細胞壁の機能を、 CETの酵素機能や細胞壁構築・再編の視点から再検証し、発生制御における細胞壁の新規な機能の解明を目指す点にある。AtXTH11はAtXTH3と同じサブクレードに属する遺伝子であり、XTH3と同様にCET活性を持っている可能性がある。ところがAtXTH11の機能欠損変異体であるT-DNA挿入ラインは得られていない。そこでCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集により、2エキソンに1 bp の塩基が挿入され、蛋白質翻訳時にフレームシフトを引き起こす系統を作成した。AtXTH11はシロイヌナズナ培養細胞由来プロトプラストのプロテオーム解析で唯一検出されたXTHであることから、この遺伝子の欠損変異体を用いて細胞壁再生過程を解析することで、CET活性が持つ特有の機能の解明を目指した。細胞壁の再生過程の解析は、我々がすでに確立した定量的なセルロース再生過程の画像解析技術を用いてセルロース微繊維の新生過程を、野生型とAtXTH11機能欠損変異体の間で比較した。その結果、野生型とAtXTH11機能欠損変異体との間に有意な差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
AtXTH3のホモログとして推定し、解析を進めてきたAtXTH1、AtXTH2、AtXTH11の生理機能からのアプローチは、新規な生理機能の特定に至っていないものの、変異体の解析は終えることができたので、次のステップである、細胞内での動態や、組換え蛋白質を用いた機能解析に研究を進める段階に至った点で、計画は概ね進んでいる。
AtXTH1, 2, 11について、それぞれの組換え蛋白質を用いて、CET活性の解析を進めると同時に、、AtXTH3, 11, 22の35Sプロモーターによる過剰発現体や、estragiolによる過剰発現誘導用の形質転換体を作成したので、今後、これらの詳細な表現型解析を行う予定である。 さらに、AtXTH1, 2, 3, 11, 22 GFP-GUSレポーター形質転換体の作成も順次進め、発現部位と表現型の関連も調査する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Nature Plants
巻: 4 ページ: 669-676
10.1038/s41477-018-0217-7
Science
巻: 361 ページ: 181-186
10.1126/science.aat1577
https://www.sci.kanagawa-u.ac.jp/bio/faculty_member.html
http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/nishitani_lab/