研究課題
キシログルカンの繋ぎ換え反応を触媒すると考えられてきたXTHファミリーの一つであるAtXTH3が、セルロース分子鎖を繋ぎ変え、セルロース微繊維どうしを共有結合で連結するセルロース繋ぎ変え酵素(以下CETと略す)活性を持つことを我々は数年前に見出した。CETの発見は「セルロース微繊維間には共有結合による連結が無い」とする旧来の陸上植物細胞壁モデルとその機能の見直しを迫るものである。本研究では、CETの酵素機能およびプロトプラスト上での細胞壁構築・再編過程の解析の両面からこの点について解析を進めた。昨年度までに、AtXTH3 とよく似た遺伝子 AtXTH1, AtXTH2 との多重変異体を作出したものの、表現型が見られなかったため、本年度は、改めて組換え蛋白質の解析を進めたが、組換え蛋白質の産出宿主細胞として使用してきた Pichia pastoris では蛋白質を本研究に必要な量を十分に発現できないことが判明した。そこで、改めて、宿主および解析対象とする酵素の検討を行い、Brevibacillus choshinensis が有望との結論に達した。また、酵素活性の解析対象の遺伝子の選別のために、最新のゲノムデータベースを用いたXTH遺伝子の包括的な系統樹解析を進め、対象遺伝子候補の絞り込みを進めた。その結果、植物の系統で最初の XTH を車軸藻のゲノム中に見い出した。これらのゲノム情報と、新しい蛋白質発現系を用いての、蛋白質の発現と解析は、残念ながら今後の課題として残ったままである。一方、細胞壁構築・再編過程の解析は、シロイヌナズナのキシログルカン合成能欠損変異体xxt1 xxt2のプロトプラスト上での、細胞壁再生過程を、我々が確立した定量的イメージング法を用いた実験系により進め、キシログルカンがセルロース微繊維のネットワーク構造に必須でないことを実証した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
Plants
巻: 9 ページ: 629
10.3390/plants9050629
J. Plant Res.
巻: 133 ページ: 419-428
doi.org/10.1007/s10265-020-01186-z
Frontiers in Plant Science
巻: 11 ページ: 193
https://doi.org/10.3389/fpls.2020.00193
PLoS Biology
巻: 17 ページ: 12
10.1371/journal.pbio.3000560