研究課題
高等植物の体は様々な細胞群が協調して機能することで成り立つが、それら細胞間のコミュニケーションを秩序立てて処理する仕組みや、その仕組みが発生・成長の制御において担う役割に関して、過去に解明された例は未だ限定的である。そのような中、研究代表者は、共通の受容体ファミリーが複数の現象で共通して働くものの、現象ごとに異なるリガンドを受容し、さらにその受容体経路の下流では現象ごとに異なる低分子ホルモン経路の働きが調節される、という興味深い受容体システムに関する研究を展開してきた。本研究ではこの研究経緯を発展させ、リガンドの選択性を現象ごとに変化させる分子機序、異なる低分子ホルモン経路の働きが現象ごとに調節されるメカニズム、に焦点を当てた解析を行い、これらの仕組みで中心的な役割を担う新規制御因子群の同定までを目指す。本年度は、本研究で解析対象とするERファミリー受容体群のリガンドとして知られる分泌ペプチドファミリーの中で、おしべの成長に関わる因子を土堤することができた。面白いことに、着目した因子の単独変異体では低温下における花器官の成長に異常が生じ、受粉を達成できないことが判明した。この異常は通常温度では生じなかった。さらに、この因子に加えてこの因子の類似因子群も同時に機能喪失する多重変異体では、通常温度下でも受粉異常が生じた。すなわち、このリガンドサブファミリーは、温度に応じて冗長的な組み合わせを変えなが頑強な花器官の成長を実現する働きを持つと考えられる。このシグナル下流では、植物ホルモンのジベレシン経路が調節されている可能性も見出した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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