研究課題/領域番号 |
17H03697
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
栗原 大輔 名古屋大学, 理学研究科, 特任講師 (90609439)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 植物 / 胚発生 / 細胞運命 / 細胞間コミュニケーション / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、胚体-胚柄間における細胞間コミュニケーションの解明を目指し、アポプラスティック経路に関わるリガンド-受容体ペアの同定、およびシンプラスティック経路に関わる因子の同定の2研究項目を実施した。 アポプラスティック経路に関わるリガンド-受容体ペアの同定:リガンドとしては、CLE8ペプチドに着目して研究を行った。CRISPR/Cas9システムにより変異を導入してCLE8のノックアウト植物体を作製し、胚柄から胚体様組織が形成されるなど、遺伝子発現を含めて異常は見られないか解析を行ったが、顕著な表現型は観察されなかった。また、蛍光マーカーラインを作製して発現場所を解析したが、胚体や胚柄ではなく、胚乳のみで発現が検出された。このことから、CLE8は胚体-胚柄間における細胞間コミュニケーションに直接は関わっていないことが明らかとなった。受容体候補の同定としては、CLEペプチドに結合しうるロイシンリッチリピート(LRR)型受容体キナーゼに着目して研究を行った。網羅的に、LRRファミリーにおける各T-DNA挿入ノックアウト変異体を観察した結果、胚柄に異常が見られる候補が見つかった。 シンプラスティック経路に関わる因子の同定においては、有力候補であるWOX2に着目して研究を行った。WOX2がタンパク質として頂端細胞から基部細胞へ移動している可能性を明らかにするために、IR-LEGO法により頂端細胞にだけWOX2の発現を誘導させライブイメージングを行ったが、転写因子であるWOX2は分解が速いためか、顕著なWOX2の発現上昇は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、アポプラスティック経路に関わるリガンド-受容体ペアの同定およびシンプラスティック経路に関わる因子の同定を目指したが、リガンドに関しては、過去の論文で報告されていたCLE8が因子ではないことが明らかとなり、受容体に関しては候補を得ることができ、おおむね順調に進展していることから、計画通りに進んでいると言える。IR-LEGO法による転写因子の直接誘導は困難なことが判明したため、次年度改善を進める。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CLEファミリーを全32種についてノックアウト変異体の表現型解析を行う。また、単独変異体では表現型頻度が低いことも考えられるため、公開されたトランスクリプトームデータを元に、掛け合わせによって多重変異体を作成して解析を進める。受容体候補の同定においては、胚柄に異常が見られた候補について発現解析およびCLEペプチドとの相互作用解析を行う。 シンプラスティック経路にについては、シンプラスティック経路を実際にシグナル分子が伝わっているかを解析するために、光顕微操作によって原形質連絡を制御する系の確立を目指す。細胞壁へのカロースの蓄積により原形質連絡を阻害できる、変異型カロース合成酵素iCals3m(Vaten et al., 20011)を時空間特異的に発現させるために、光刺激による局所温度上昇により発現誘導できるIR-LEGOシステムを用いて解析を行う。HSp(ヒートショックプロモーター)::iCals3m植物体を用いて、IR-LEGOにより頂端細胞にiCals3mを発現した結果、胚体が存在するにもかかわらず、胚柄細胞の細胞運命が転換するかを解析することにより、シンプラスティック経路の関与を明らかにする。
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