研究課題
本研究では、胚体-胚柄間における細胞間コミュニケーションの解明を目指し、アポプラスティック経路に関わるリガンド-受容体ペアの同定、およびシンプラスティック経路に関わる因子の同定の2研究項目を実施した。アポプラスティック経路に関わるリガンド-受容体ペアの同定:リガンドとしては、CLE8に着目して研究を開始したが、昨年度の表現型解析・発現解析よりCLE8が胚体-胚柄間における細胞間コミュニケーションに直接は関わっていないことが明らかとなったため、今年度はCLEファミリーを全32種についてノックアウト変異体の表現型解析を行った。しかしながら、CLEファミリーの単独変異体では顕著な表現型が見られなかった。一方、既存の発現データベースでCLEファミリーが胚で発現しているか解析したが、受精卵分裂直後の発現データは不足していたため、CLE32種について、プロモーター発現マーカーラインを作成し、発現解析を行った。その結果、胚で発現が確認できたCLEが存在した。受容体候補の同定においては、CLEペプチドに結合しうるロイシンリッチリピート(LRR)型受容体キナーゼに着目して研究を行った結果#16で表現型が現れたため、受容体候補として解析を進めていたが、表現型と#16のT-DNA挿入箇所が一致しなかった。このことは、原因遺伝子がT-DNA挿入ヶ所とは別に存在していることが考えられた。シンプラスティック経路に関わる因子の同定においては、シンプラスティック経路を実際にシグナル分子が伝わっているかを解析するために、光顕微操作によって原形質連絡を制御する系の確立目指し、細胞壁へのカロースの蓄積により原形質連絡を阻害できると期待されるHSp::iCals3m植物体において、IR-LEGOによる条件確立を行った。
3: やや遅れている
本年度の計画では、アポプラスティック経路に関わるリガンド-受容体ペアの同定およびシンプラスティック経路に関わる因子の同定を目指したが、リガンドに関しては、胚で発現が確認できたCLEが見つかった一方、受容体に関しては、候補と考えていた#16が別の箇所の変異により表現型が現れていることが示唆されたため、引き続き受容体候補を探索する必要がでてきた。シンプラスティック経路に関わる因子の同定においては、IR-LEGO法による原形質連絡の特異的阻害を確立を進められた。
今後は、発現解析により胚での発現が確認できたCLEを中心に、掛け合わせによって多重変異体を作成して解析を進める。受容体候補の同定においては、これまでに進めてきた多重変異体の表現型を解析することで、すみやかに受容体候補を探索する。また、表現型が観察されている#16の原因遺伝子を特定することで、胚体-胚柄間における細胞間コミュニケーションに関係する因子の同定を試みる。シンプラスティック経路にについては、シンプラスティック経路を実際にシグナル分子が伝わっているかを解析するために、HSp::iCals3m植物体を用いて、IR-LEGOにより、胚において細胞運命が転換するかの解析を進める。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 116 ページ: 2338~2343
10.1073/pnas.1814160116