研究課題/領域番号 |
17H03698
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
橋本 隆 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80180826)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小管 / ストレス / リン酸化 / ゼニゴケ |
研究実績の概要 |
環境変化やストレスに対して適応するため、植物細胞は多様なストレス感受システムと細胞内シグナル伝達経路を進化させてきた。本研究では、浸透圧ストレスで瞬時に活性化されて微小管細胞骨格を一過的に消失させる鍵酵素PHS1の活性制御機構とその生理的意義を明らかにする。PHS1 は中央部にαチューブリンをリン酸化するキナーゼ領域を持ち、C 末端にMitogen-activated protein kinase (MPK)を特異的に脱リン酸化させ不活性化させると報告されているMPK フォスファターゼ領域を併せ持つ。 本年度は、PHS1の推定活性化ループ以外の自己リン酸化される可能性のあるアミノ酸残基について、リン酸化の役割について検討した。陸上植物のPHS1には推定活性化ループのC末端に保存されたチロシン残基が存在する。このチロシン残基は組換えシロイヌナズナPHS1を用いた自己リン酸化反応によりリン酸化される。このチロシン残基をリン酸化されないフェニルアラニン残基に置換した変異PHS1はin vitroにおいて野生型の約20%の酵素活性を示すこと、その場合にPHS1の自己リン酸化程度が約20%に低下することが判明した。このリン酸化チロシン残基近傍のペプチドを用いてポリクローナル抗体を作製した。ELISA法では本抗体は免疫に用いたリン酸化ペプチドを認識したが、自己リン酸化反応を行った野生型PHS1とチロシン変異PHS1の認識には大きな差異は見られなかった。 また、このチロシンをフェニルアラニンに置換した変異PHS1をゼニゴケPHS1ヌル変異株に形質転換し、変異株の表現型を相補するかどうかを調べた。変異PHS1はPHS1変異株をほとんど相補しなかったことから、in vivoにおいてこのチロシン残基はPHS1機能に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組換えPHS1タンパク質を用いたin vitroリン酸化反応とLC-MS/MSによるリン酸化ペプチド分析により、自己活性化に必要なリン酸化されるアミノ酸残基の同定を行った。推定よりもはるかに多くのリン酸化アミノ酸残基が検出された結果、候補となるアミノ酸残基を選択するのが困難であった。最初に、推定活性化ループに存在するアミノ酸残基に着目して実験を行ったが、それらのアミノ酸残基は活性化に重要でないと判明した。その後、それ以外の場所のリン酸化アミノ酸残基に着目して実験を展開することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
PHS1の活性化にMPKが関与することが推測されている。ゼニゴケには3つのMPK遺伝子しか存在しないため、それぞれのMPK遺伝子破壊株を作製し、PHS1の活性化に関与するMPK遺伝子を同定する。MPK1遺伝子破壊株は致死であるため、条件的破壊株を構築する。
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