研究課題/領域番号 |
17H03699
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
坂本 亘 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (20222002)
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研究分担者 |
高見 常明 岡山大学, 資源植物科学研究所, 技術職員 (70614254)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物生理 / オルガネラ分化 / プロテアーゼ / ヌクレアーゼ / 葉緑体 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
本研究では、シアノバクテリアの細胞内共生により生じた葉緑体が、前駆体であるプロプラスチドから葉緑体に分化し維持されるために必須なプロセッシブ分解の調節機構を明らかにするとともに、分解産物であるペプチド・ヌクレオチドの葉緑体外輸送など、その生理機能についても着目し、葉緑体のホメオスタシス・機能転換と生体高分子分解の関係を統合的に理解する。以下の3つの項目について研究を進めた。 (1)プロセッシブなタンパク質分解酵素FtsHの制御機構:FtsHはチラコイド膜の主要プロセッシブタンパク質分解酵素である。H30年度はFtsH2のリン酸化部位についてS212, T337, S380, S393のセリンおよびスレオニン残基がリン酸化されていることを推定した。それぞれの残基をアラニンに置換したFtsH2を発現する遺伝子をFtsH2欠損変異体に導入したところ、S212Aの変異ではFtsHの蓄積が低下していた。 (2)プロセッシブな核酸分解酵素DPD1の制御機構:昨年度までに作製した、エストラジオール誘導系により変異型および野生型DPD1を発現するシロイヌナズナトランスジェニック個体について、ホモ化した系統を用いてDPD1の誘導を確認した。転写レベルでの発現誘導は確認されたが、ウエスタン解析によるDPD1タンパク質の発現が確認できなかった。これまでDPD1恒常的発現系でもDPD1の発現に成功しておらず、DPD1発現の毒性あるいは他の影響が考えられたので、本実験の続行は再検討することにした。 (3)分解産物の葉緑体排出の解析:内包膜に局在するABCトランスポーターTAP1によるペプチド排出機構があることを明らかにした。tap1変異体でのペプチド残存には優位な増加は検出されなかった。TAP1の欠損が葉緑体機能にどのような影響を及ぼすかをRNAseq等で検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、葉緑体でのプロセッシブ分解を担う酵素として、FtsHプロテアーゼ、DPD1ヌクレアーゼに着目しているが、それぞれの研究で当初の計画通りに進捗している。DPD1については、総説と論文を成果として発表することができた。また、ペプチド分解産物の葉緑体排出については、TAP1ホモログに着目した解析も計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
FtsHのリン酸化制御によるタンパク質分解の解析では、推定リン酸化部位にアミノ酸置換を導入した形質転換植物の解析を継続して進め、リン酸化とFtsH複合体形成について考察する。研究の過程で、ジスルフィドによるFtsHの修飾も報告されたことから、これらについても国際共同研究で今後研究を進める。 DPD1による核酸分解については、得られた形質転換植物でエストラジオールによるDPD1タンパク質の発現を調べたが、残念ながら発現がウエスタンブロットで確認できていない。H31も継続するが、生化学的解析が困難な場合はこの実験を終了し、代わりにイネのゲノム編集で作出しているDPD1欠損個体を用いた解析を進め、今後はDPD1機能の普遍性について検証する。 ペプチド分解産物排出機構の研究については、TAP1トランスポーターについて引き続き解析を進める。特にTAP1欠損シロイヌナズナ変異体における葉緑体機能への影響を、var1, var2など関連する変異体と交配し、詳しく調べる。
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