研究課題
葉緑体型ペプチドグリカン(PG)に関する以下の3つの研究を推進した。(1) 「PG可視化を指標とした葉緑体PGの単離・構造解析と動態解析」我々はコケ植物の葉緑体がPGで覆われていることを示してきた。そこで灰色植物のPG単離法を参考に、分離した葉緑体からPGと思われる沈殿を得た。この沈殿はPG可視化法で可視化される蛍光を持っており、また、PGを分解するリゾチームによって分解された。質量分析計を用いた解析を始めており、今後詳細な分子構造を明らかにしていきたい。(2) 「葉緑体型PGシステムの分子機構の解明」(2)-a PBPはMurタンパク質群によって作られたPGモノマーを既存のPGに結合する最終合成に関わる酵素である。Mycタグを付加したPBPが発現する形質転換ヒメツリガネゴケから葉緑体中のPBP複合体を免疫沈降法で単離し、質量分析により候補タンパク質の同定を進めた。候補タンパク質の中には糖結合ドメインを持つタンパク質が含まれていたことから、今後はこれらのタンパク質について解析を進めていきたい。(2)-b 細菌が増殖時に二分裂するためには、最終段階で網目状の高分子であるPGを切断する必要がある。PGの糖鎖部を切断する酵素MltBと、ペプチド部を切断する酵素Dac、YfeWをコードすると考えられる遺伝子をヒメツリガネゴケのゲノム中から見いだしている。それぞれの単一遺伝子破壊ラインは作成できたので、今後は多重遺伝子破壊ラインの作成を進めたい。(3) 「葉緑体型PGを持つ植物の普遍性と進化に関する研究」PG代謝標識法を、基部ストレプト植物のシャジクモ藻のクレブソルミディウムに応用し、葉緑体PGの可視化を試みた。DA-DA合成を阻害するD-サイクロセリンとEDA-DAを同時に添加して培養を行い、葉緑体PGと思われる蛍光を得ることができた。今後は詳細な解析を行いたい。
2: おおむね順調に進展している
Plant Biology2017等の国際学会、植物学会・植物生理学会等の国内学会での研究発表を行うと共に、論文発表を進めており、研究は順調に進展していると考えている。
(1) 「PG可視化を指標とした葉緑体PGの単離・構造解析と動態解析」コケ植物の葉緑体からPGを単離後に質量分析計で解析を進め、コケ植物の葉緑体PGの構造を決定したい。(2) 「葉緑体型PGシステムの分子機構の解明」(2)-a PBP複合体に存在することが予測される糖結合ドメインを持つタンパク質の遺伝子について、ヒメツリガネゴケ破壊ラインを作成し機能解析を進める。(2)-b MltB、Dac、YfeW等の多重遺伝子破壊ラインの作成を進める。(3) 「葉緑体型PGを持つ植物の普遍性と進化に関する研究」クレブソルミディウム葉緑体PGの詳細な観察を進める。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
Plant and Cell Physiology
巻: 58 ページ: 1743~1751
10.1093/pcp/pcx113
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Journal of Plant Research
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