研究課題/領域番号 |
17H03701
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高野 博嘉 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (70242104)
|
研究分担者 |
児島 征司 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20745111) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 葉緑体 / バイオテクノロジー |
研究実績の概要 |
葉緑体型ペプチドグリカン(PG)に関する以下の3つの研究を推進した。 (1) 「PG可視化を指標とした葉緑体PGの単離・構造解析と動態解析」我々はコケ植物の葉緑体がPGで覆われていることを示してきた。灰色植物のPG単離法を参考に、ヒメツリガネゴケから分離した葉緑体からPGと思われる沈殿を得ることができた。液体クロマトグラフィーで分画後、イオントラップ型質量分析法計を用いた解析を行い、葉緑体PGの基本構造を明らかにすることができた。 (2) 「葉緑体型PGシステムの分子機構の解明」(2)-a PBPはPGの最終合成に関わる酵素である。Mycタグを付加したPBPが発現する形質転換ヒメツリガネゴケから葉緑体中のPBP複合体を免疫沈降法で単離し、質量分析により候補タンパク質を同定した。この中の糖結合ドメインを持つタンパク質について、ヒメツリガネゴケで単一遺伝子破壊ラインを作成し、形質を観察中である。 (2)-b 細菌が増殖時に二分裂するためには、最終段階で網目状の高分子であるPGを切断する必要がある。PGの糖鎖部を切断する酵素MltBと、ペプチド部を切断する酵素Dac、YfeWをコードすると考えられる遺伝子をヒメツリガネゴケのゲノム中から見いだしている。これらの多重遺伝子破壊ラインの作成を進めた。PG合成遺伝子の破壊ラインにみられるような巨大な葉緑体は観察されないものの、葉緑体数に異常が生じていた。 (3) 「葉緑体型PGを持つ植物の普遍性と進化に関する研究」PG代謝標識法を、基部ストレプト植物のシャジクモ藻のクレブソルミディウムに応用し、葉緑体PGの可視化に成功した。このことは、葉緑体PGがコケのみでなく、他の生物にも普遍的に存在していることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学での招待講演、植物学会・植物生理学会等の国内学会での研究発表を行うと共に、論文発表を進めており、研究は順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
葉緑体型PGに関する以下の3つの研究を推進する。 (1)PG可視化を指標とした葉緑体PGの単離・構造解析と動態解析。葉緑体PGの構造の詳細を明らかにしていく。 (2) 葉緑体型PGシステムの分子機構の解明。(2)-a PBPはPGの最終合成に関わる酵素である。PBPと複合体を形成すると考えられる、糖結合ドメインを持つタンパク質について、多重遺伝子破壊ラインの作成を進めることで機能を明らかにしていく。(2)-b 細菌が増殖時に二分裂するためには、最終段階で網目状の高分子であるPGを切断する必要がある。PGを切断する酵素遺伝子について、多重遺伝子破壊ラインの作成を更に進め、それらの機能を明らかにしていく。 (3) 葉緑体型PGを持つ植物の普遍性と進化に関する研究。裸子植物のPG合成系遺伝子について、更に解析を進めていく。
|