研究課題
1) 根粒菌感染と硝酸処理によるIPT3発現誘導時期と発現部位の特定根粒形成のオートレギュレーション(AON)を仲介する受容体キナーゼHAR1は、シロイヌナズナCLV1のオルソログであるが、葉で発現し、茎頂メリステムにおける幹細胞数の制御には寄与していない。根粒菌感染あるいは硝酸処理を行ったミヤコグサにおいて、地上部でのAONの応答を捉えるために、野生型MG-20とhar1根粒超着生変異体を用いて、サイトカイニン合成酵素遺伝子IPT3の発現をqRT-PCRで経時的に解析した。また、IPT3プロモーターGUSによって発現部位を解析した。レポーター解析より、根粒菌の感染あるいは硝酸処理によるHAR1依存的なIPT3の誘導は成熟葉のみで起こり、未熟葉や茎では起こらないことを明らかにした。次に、成熟葉での発現解析によって、IPT3の誘導は根粒菌の感染あるいは硝酸処理後1日で起こることが分かった。更に、硝酸処理によってIPT3はHAR1依存的な誘導だけでなく、非依存的にも誘導されることを新たに見出した。2) サイトカイニン応答部位を可視化するレポーター系統の作成人工サイトカイニンセンサーのTCSnプロモーターを用いたレポーター解析によって、AON依存的なサイトカイニン応答部位や時空間的な広がりの解析を行った。具体的には、TCSn::GUSベクターを作成し、根のみを一過的に形質転換できる毛状根形質転換法を用いて、ミヤコグサの根でサイトカイニンに応答してGUS活性が上昇することを確認した。stable形質転換体も作成した。3)構成的AON系統の作成 ミヤコグサCLE-RS1、CLE-RS2ペプチドは、根からシュートへの遠距離シグナル物質として機能する。根粒形成が強く抑制されるCLE-RS1及びCLE-RS2過剰発現系統を選抜した後、成熟葉におけるRNA-seq解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
ミヤコグサhar1変異体を用いて、根粒菌感染と硝酸処理によるシステミックなIPT3発現の誘導時期と発現部位(成熟葉)を明確に特定できたことが一番の進展である。根由来シグナルであるCLE-RS1及びCLE-RS2の過剰発現系統の作出では苦労したが、最終的に強い根粒形成抑制効果のある系統を選抜することができ、その個体の成熟葉を用いてRNA-seq解析を行うことができた。HAR1依存的・非依存的にシステミックに振る舞う硝酸応答遺伝子等を多数特定することに成功している。シュートシグナルを受け根で機能するTMLについては、ミヤコグサ毛状根系を用いて相互作用因子の探索を行ったが、H29年度末時点において有力候補を特定するには至っていない。
HAR1及びCLE-RS1, CLE-RS1依存的発現遺伝子の中から、根粒形成の制御に強く関わる遺伝子を機能解析により絞り込む。一方TMLについては、共沈殿とLC-MS解析で特定した相互作用因子候補の中から、根粒形成の制御に強く関わる因子を絞り込む。根粒数と根粒菌非感染時の根系形成を制御するアラビノース転移酵素PLENTYについては、必要なデータを整理し論文化する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
DNA Res.
巻: 24 ページ: 193-203
10.1093/dnares/dsw052.
Nat Commun.
巻: 499 ページ: 1-14
10.1038/s41467-018-02831-x.