研究課題/領域番号 |
17H03703
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
玉田 洋介 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (50579290)
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研究分担者 |
榊原 恵子 立教大学, 理学部, 准教授 (90590000)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞の運命転換 / エピゲノム / シングルセル / トランスクリプトーム / イメージング |
研究実績の概要 |
細胞の運命転換過程におけるエピゲノムの動態と、エピゲノムとトランスクリプトームがどのように相互作用して細胞の運命転換を駆動しているのかをシングルセルレベルで解明することが本研究の目的である。そのために、ヒメツリガネゴケの幹細胞化をモデルとして、単一細胞核4Dイメージング、次世代シーケンサーを用いたエピゲノム解析、シングルセルトランスクリプトーム解析を統合して解析する。本年度の主な成果を以下に示す。 1, クロマチン修飾標識株の作出:細胞の運命転換に機能すると考えられるH3K4me3結合タンパク質標識株を複数作出し、細胞核における局在を観察した。また、メチル化DNA、H3K9me2結合タンパク質標識株の作出が進行中である。 2, 幹細胞化過程の4Dイメージング法の確立:4Dイメージングの際の長時間の励起光による光障害によって幹細胞化が抑制されるという問題を解決するため、像を取得する際の励起時間や植物体に供給する光の方向などの条件を最適化し、幹細胞化が阻害されにくい観察条件を確立した。 3, 植物細胞のシングルセルトランスクリプトーム解析(連携研究者 久保 稔博士を中心とした共同研究):細胞壁によって固定されている植物細胞はこれまでシングルセルトランスクリプトーム解析に供することができなかったが、顕微操作によって細胞抽出液を吸引してunique molecular identifier法によりシーケンシングを行うことで、安定してシングルセルトランスクリプトーム解析を行うことができるようになった。 4, ヒストン修飾とヒストンバリアントの関係の解明:これまでに、ヒストンバリアントH3.3がH3K27me3に対して正に機能することを明らかにしていたが、一般にH3.3はK27me3を持たないとされていた。質量分析によって、ヒメツリガネゴケの配偶体においてH3.3がK27me3を持つことを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロマチン修飾標識株などの作出には若干の遅れがあるものの、おおむね実験は順調に進展している。また、実験材料として用いているヒメツリガネゴケの配偶体においてヒストンバリアントH3.3がK27me3を有することを質量分析によって解明するなど新しい結果も得られている。こうしたこれまでのエピゲノム解析と単一細胞核イメージングの結果と、シングルセルトランスクリプトーム解析の結果をそれぞれ取りまとめて、2報の論文を執筆中である。以上を総合的に考慮し、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでのエピゲノム解析と単一細胞核イメージングの結果を取りまとめた論文と、シングルセルトランスクリプトーム解析を取りまとめた論文の発表を目指す。また、メチル化DNA、H3K9me2結合タンパク質標識株の作出を継続するとともに、作出済みのH3K27me3結合タンパク質標識株、H3K4me3結合タンパク質標識株を用いて幹細胞化過程の単一細胞核4Dイメージングを複数回行い、幹細胞化過程におけるクロマチン修飾の動態を定量的に解析し、細胞の運命転換が起きる瞬間を解明する。さらに、上記クロマチン標識修飾株を用いたChIP-seq解析を行う。解析の標的は、クロマチン修飾結合タンパク質蛍光タンパク質融合タンパク質と対応するクロマチン修飾であり、抗蛍光タンパク質抗体と抗クロマチン修飾抗体を用いる。これによって、クロマチン修飾結合タンパク質が本当にクロマチン修飾を認識しているのかを解明できるとともに、幹細胞化過程におけるクロマチン修飾結合タンパク質の局在をゲノムワイドに同定できる。このChIP-seqの結果と単一細胞核4Dイメージングの結果を合わせ、幹細胞化過程におけるエピゲノム動態をモデル化する。
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備考 |
アウトリーチ活動など 高校生研究ポスター発表 選任審査員:玉田 洋介ら、日本植物学会第81回大会、野田、2017年9月10日
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