研究課題/領域番号 |
17H03711
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 邦史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90211789)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減数分裂 / DNA再編成 / 組換え / ゲノム |
研究実績の概要 |
ゲノムDNAの切断は、細胞に致死的な影響を及ぼすだけでなく、修復経路によって様々な染色体再編成や遺伝子変異を生じ、がん化や細胞老化などの疾患に結びつく。一方、減数分裂期にはSpo11 によるゲノムDNAの切断が組換えホットスポットで生じるが、染色体転座などは抑制され、比較的保守的なゲノム変化をもたらす。両者の違いは、相同染色体の対合やシナプトネマ構造といった減数分裂特異的な染色体構造の存在に起因すると考えられるが、その詳細は不明である。そこで本研究では、申請者が独自に開発した多部位ゲノムDNA 切断技術「TAQingシステム」を用いて、有糸分裂期と減数分裂期の染色体再編成の本質的な違いや分子機構を構成的手法により明らかにする。これにより、有性生殖や発がんなどにおける遺伝情報多様化の機構や原理を探る。 昨年度は下記の研究成果を得た。前年度までに確立した減数分裂期TAQingシステム用の酵母株に、TaqI発現ベクターを導入し、減数分裂期にTaqIを誘導してTAQingを実施した。その結果、予想以上にDNA切断による致死的効果が生じ、胞子生存率が著しく低下することが明らかになった。これは減数分裂期にTaqIが強力にゲノムDNAの切断を行っている可能性、あるいは減数分裂期染色体がDNA切断に対して強い感受性を示す可能性などが考えられる。両方の可能性を考慮して、TaqIの発現量をさらに巧妙に制御する必要があると考えた。そのため、具体的には染色体へ減数分裂期特異的プロモーターの下流に配置したTaqI遺伝子を染色体に挿入する実験系を新たに構築することとした。酵母ゲノム解読に関しては、一分子DNAシーケンサーであるMiNIONによる解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有糸分裂TAQingの論文をNature Comm.に発表し、企業や他研究者との共同研究に発展してきている。減数分裂期TAQingシステムの課題が新たに明らかになったが、概ね順調に研究は進捗し ている。
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今後の研究の推進方策 |
1)減数分裂TAQingを稼働させて、得られた細胞群について、illumina とPacbioやOxford Nanoporeのシステムを用いたハイブリッド配列解析ににより、ゲノム再編成の状況を把握する。 2)減数分裂TAQingシステムの構築と実行:減数分裂誘導用の株の構築については、引き続き進める。株の構築が完了次第、減数分裂時のTAQing実験を開始する。 3)有糸分裂期TAQingシステムを用いた検証:有糸分裂期の酵母細胞については、引き続き再編成株の分析結果を蓄積していく。
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