研究実績の概要 |
10種類のアミノ酸で再構成した3種類の祖先型ヌクレオシドニリン酸キナーゼ、Arc1-10KS, Arc1-10RS, Arc1-10FIのうち、Arc1-10KSとArc1-10RSは検出可能なリン酸基転移活性を示さなかったが、80℃以上まで安定な立体構造を保つことが分かった。この結果から、10アミノ酸種類あれば、安定なタンパク質構造の形成に必要な情報を内包したアミノ酸配列がつくれることが示された。一方、Arc1-10FIは大腸菌で十分に発現できなかった。 Arc1-10KSとArc1-10FIの触媒活性に重要と思われる部位を元のアミノ酸に戻したArc1-10KS+HKNYとArc1-10FI+HNYを作製したところ、検出可能な活性を回復した。 アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、バリンの10アミノ酸種はしばしばプレバイオティックアミノ酸として参照され、原始地球にも比較的豊富に存在した可能性が指摘されている。本研究で構築したArc1-10KSとArc1-10RSでは、プレバイオティックアミノ酸が81.2%を占めた。触媒活性を回復したArc1-10KS+HKNYとArc1-10FI+HNYでは、プレバイオティックアミノ酸がそれぞれ78.2%と81.9%を占めた。 アミノアシルtRNA合成酵素の祖先型復元解析では、ProRS共通祖先、SerRS共通祖先、ProRS/SerRS共通祖先について、分子系統解析に基づく配列推定と祖先型復元をおこなった。これらと、IleRS共通祖先、ValRS共通祖先、IleRS/ValRS共通祖先のアミノアシル化触媒活性を、アミノアシル化反応で生成するピロリン酸をリン酸に分解して定量した。その結果、いずれの祖先ARSもアミノ酸特異的にリン酸の生成が生じることを見いだした。
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