研究課題/領域番号 |
17H03718
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
横山 潤 山形大学, 理学部, 教授 (80272011)
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研究分担者 |
福田 達哉 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (00432815)
藤山 直之 山形大学, 理学部, 准教授 (90360958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共生 / 寄生 / 植物 / 植食性昆虫 / 真菌類 / バクテリア / 進化 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
植物と植食性昆虫の関係は、共進化の顕著な実例の1つであり、両生物群の多様化を促進している。この関係を通して、植物は防御物質の合成などの防御機構を進化させている。防御物質は、共生微生物によって合成される場合もあるが、明確な事例は少ない。一方で、共生微生物は植物の成長促進などの効果を示し、根に作用するものもある。根は防御物質合成の場にもなっており、根の発達は地上部を摂食する昆虫にも影響を及ぼす可能性が高い。そこで本研究では、植物と植食性昆虫の関係性の進化に与える根圏共生微生物の影響を、主にアルカロイド合成系に対する貢献の観点から明らかにすることを目的としている。 昨年度に引き続き、研究系として(i)ハシリドコロ(ナス科)―ルイヨウマダラテントウ及び(ii)クララ(マメ科)―チョウ目昆虫を用いた。まず、昨年度行えなかった(ii)の研究系における根圏共生微生物相の解析(単離法、メタゲノム解析)を実施し、 根粒菌相(Mesorhizobiumなど)を中心に共生微生物相が明らかになった。メタゲノム解析の結果も、重要度が高いと考えられる主要な微生物構成は概ね単離法の結果と一致しており、この結果を元に感染実験に使用する微生物を選択することが可能となった。また、(i)と(ii)の研究系において、栽培・感染実験を開始し、培養条件下での微生物感染による諸形質の変化に関する解析を開始しているが、培養室内での栽培では想定より成長が遅いため、根の形態やバイオマスの変化供試菌類が影響しているか否かについては、現段階では十分評価できていない。野外の植物を利用した植食性昆虫の飼育実験の結果、産地による差が見られた組み合わせもあったが、現在植食性昆虫のよる食害を受けているかなど、当初想定していた条件による影響は明確には示されず、より複雑な条件が植食性昆虫の摂食行動や成長に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体の研究計画のうち、根圏微生物相の解析については、2017年度に実施できなかった部分も含めて完了し、2018年度中に遅れを取り戻すことができた。クララの根圏微生物相の解析は、クララが全国的に減少傾向にあることとも関連していたため、さらに情報収集に努め、条件にあう集団から解析することができた。それに伴って、感染実験系の確立も遅れていたが、微生物相の解明が進み、対象とする微生物を絞ることができたため、この問題も概ね解決した。想定よりも植物の成長が遅く、条件を揃えた発芽率の良い種子を多数準備するのにも想定より難しい点があったため、微生物の感染によるアルカロイド量などを含む諸形質の変化に関する評価は、2019年度にずれ込んでしまっている。飼育実験は順調に行っているが、現時点での植食性昆虫の存在の有無のような、当初想定した単純な条件で植食性昆虫の摂食行動やその後の成長が決まっているわけではない可能性も示された。問題点の一部は明らかになったが、現状を完全に説明可能な要因が全て明らかになっているわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
全体の研究計画のうち、根圏微生物の植物の成長への影響、及び植食性昆虫の食害への影響の解析が本研究の最も重要な部分である。この点については、微生物相解明の遅れ、感染実験確立の遅れがあったものの、栽培および栽培条件下での感染実験等が行えるようになったので、現在育成中の植物を用いて、当初予定していた諸形質の評価を実施する。飼育実験において、植食性昆虫の摂食行動やその後の成長に影響を及ぼす要因については、当初の想定より複雑であることがわかりつつあるため、より多くの集団を対象に、情報を追加して再検討しているところである。情報はそろいつつあり、最終年度内に想定していた問題点にアプローチできる予定である。
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