研究課題/領域番号 |
17H03720
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡辺 勝敏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00324955)
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研究分担者 |
武島 弘彦 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (50573086)
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60372835)
橋口 康之 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70436517)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 適応進化 / ゲノミクス / 淡水魚 / 古代湖 / 保有遺伝変異 |
研究実績の概要 |
本研究は、古代湖・琵琶湖において、「沖合」・「深場」・「岩礁」という異なる生息地に対する適応を示す固有種の進化に関するゲノム科学的理解を深めるために、固有種とその近縁種を含む複数種群を対象とし、(1)新規ゲノム配列決定を基盤に、(2)遺伝子発現解析等によるゲノムワイドな適応関連候補遺伝子の抽出と進化時期の推定、および(3)急速な表現型適応の原因遺伝子の特定と野生集団における進化動態の解析を行うものである。 第2年度は、進捗と今後の重点計画に関する打ち合わせを行ったうえで、まず(1)について、新たに2種のゲノム配列(イサザ、ウツセミカジカ;深場適応種)を10x Genomics社のChromium合成ロングリード技術を適用して決定するとともに、アブラヒガイ(岩礁適応種)についてはナノポア社のPromethIONによる長鎖シーケンシングを行い、前年度に得たChromiumデータとともに再アセンブルした。それらにより概ね高品質のドラフトゲノムを得ることができた。 (2)に関して、今年度は主にRAD-seq法やリシーケンシングを進め、一部対象固有種の系統(地理)ゲノミクス分析および歴史的集団動態の解析を進めた。これらのデータは、適応関連候補遺伝子の進化動態に関するベースラインを与えるものとなる。 (3)岩礁域において体色や体型の急速な適応進化を示したと推定されるアブラヒガイについて、体色変異の原因遺伝子の特定を進めた。昨年度までに1遺伝子座支配であることとRAD-seq標識領域の特定がなされていたが、第2年度は、ゲノム配列に基づく遺伝子予測、候補遺伝子の発現量解析、戻し交配家系のRNA-seqによる発現変動遺伝子解析、リシーケンシング等を実施した結果、体色変異の原因遺伝子が特定されたといえる段階に至った。さらに原因遺伝子の遺伝子型を簡便に判別する定量PCR実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に当初の目的に沿って研究を遂行した。 (1)基礎となるゲノム配列決定においては、これまでに高品質なDNAの抽出法、10x Genomics社のChromium合成ロングリード技術を利用した次世代シーケンシング、およびナノポア社のMinIONおよびPromethIONによる長鎖シーケンシングを組み合わせた高品質・低コストの分析およびアセンブル解析の枠組みを構築することができ、実際にこれまで関連する6種の新規ゲノムを得ることができた。 (2)に関しては、これまでに多量試料のRNA-seq分析やリシーケンシング等を進め、実験・解析系を確立した。しかし、適応関連候補遺伝子の解析について、データ解析、研究戦略の再検討を行ったため、第3年度にあらためて、実験・解析に取り組む必要がある。 (3)については、初年度に引き続き、急速な適応に関わる原因遺伝子の特定に関する実験・解析を多角的なアプローチから実施し、十分な成果を得ることができた。さらに野外での原因遺伝子の空間分布に関するデータ取得に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの基本技術の確立と実際のデータ取得・解析を踏まえ、最終年度は、分担・連携研究者間の情報交換と議論をさらに密にし、着実に研究成果の取りまとめを進める。 具体的には、年度初期に全体的な進捗確認と到達見込みに関する議論、および最新情報と課題の共有を図ったうえで、まず(1)以下の研究に必要な追加ゲノムシーケンシング(リシーケンシングを含む)を速やかに実施する。また(2)適応候補遺伝子のスクリーニングのために、RNA-seq・リシーケンスデータの解析を進めるとともに、あらたにPool-seq法を活用した多数個体のデータ取得とGWAS解析を実現する。(3)適応関連原因遺伝子の空間分布および進化動態を明らかにするための野外試料の分析および取りまとめを進める。
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