研究課題
本研究は東アジアにおける草原生植物群の1つである「満鮮要素」に焦点をあて、それらの起源や分布変遷過程についての仮説を検証することを目的として、主にRAD-seq解析やMIG-seq解析によるSNPデータによる解析を用いて研究を行った。日本列島における集団にくわえて、中国、ロシア、韓国の海外サンプリング調査をおこない、キスミレやオキナグサ、オカオグルマ、ホソバシロスミレ、ノカラマツ、ヒロハヤマヨモギ、ツチグリ、ヤツシロソウ、マツモトセンノウ、ヒゴシオンといった満鮮要素の植物を用いた分子系統地理学的解析を行った。キスミレによるRAD-seq解析、オカオグルマによるMIG-seq解析の結果、最終氷期最盛期(LGM)における分布拡大が示唆され、両種ともに従来の満鮮要素の分布変遷仮説を支持する結果が得られた。オキナグサでは分岐年代推定までは行えていないものの、比較的近年における分布拡大が示唆されている。これら3種について学術論文として発表することができた。残りの7種についても現在鋭意論文化に向けて研究を進めているところであるが以下に主要な結果を記す。ヒロハヤマヨモギについては4倍体種ということもあり、分岐年代推定は行えていないものの、葉緑体DNAの解析やMIG-seq解析、生態ニッチモデリング解析から近年の急速な分布拡大があったことが示唆された。ツチグリに関しては、系統解析や集団構造解析から、大陸集団、九州集団、兵庫集団の3つの系統やクラスターが示された。しかしDIYABC解析からは大陸集団は九州集団から派生し、それらは兵庫集団から派生したとするシナリオが最も事後確率が高く、日本から大陸へ分布拡大したとする歴史があったのかもしれない。このように満鮮要素といってもすべてが大陸を起源として日本に入り込んだのではない可能性が示され、今後の課題点が残された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Plant Research
巻: online ページ: online
10.1007/s10265-023-01452-w
巻: 134 ページ: 1181~1198
10.1007/s10265-021-01339-8