研究課題/領域番号 |
17H03722
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
立田 晴記 琉球大学, 農学部, 教授 (50370268)
|
研究分担者 |
陰山 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60401212)
菅野 良一 北海道大学, 農学研究院, 農学研究院研究員 (00648826)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 種分化 / 共生微生物 / 染色体 / 生殖隔離 / 系統進化 |
研究実績の概要 |
サッポロフキバッタの集団解析については,北海道東部,札幌周辺から主に採集されたバッタ標本から抽出されたDNAサンプルを基礎生物研究所が所有する次世代シーケンサーHi-seqにかけ,改良Rad-seq法によるデータを取得した.取得されたデータについて,quality checkや整形を実施し,集団解析可能なフォーマットにするパイプラインを作成した.整形したデータを使い,集団間の遺伝的類似性について予備解析を実施した. また次世代シーケンスをおこなった同じ個体について,Wolbachiaの表面タンパク遺伝子wspのダイレクトシーケンスを行ったところ,157個体は単一のWolbachia系統に感染されていることがわかった.7個体はさらに別系統のWolbachiaに重複感染している可能性が示唆された.また手稲由来の1個体は,異なった系統のWolbachiaに感染されていることがわかった.次に予備的に全165個体由来のDNAの混合物を用いて16Sリボソームのアンプリコン解析を行ったところ,Wolbachia以外に,Rickettsiella,Spiroplasmaなどの細菌が比較的高密度で存在することがわかった. また函館の南西部に隔離分布する集団を採集・飼育し,札幌周辺に生息する標準的な染色体構造を持つ集団との交配実験を行い,行動学的,細胞遺伝学的な隔離についてのデータ取得を目的とした.生息地へのアクセスに使用する道道は,台風によって路肩が崩壊し,一般の通行が禁止されていた.そこで片道6キロの登山コースから生息地へのアクセスを試みたが,予定時間内に生息地まで辿り着けず,本年度に実験に使用する個体の採集は断念した.下山後も数日に渡り周辺の通行可能エリアを可能な限り探索したが,サッポロフキバッタが生息可能と思われる環境が存在するにも関わらず,本種の生存は確認できなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度立てた計画は概ね順調に推移しているが,昨年度採集できなかった地域から標本採集が実施できるかどうかが1つの鍵となる.分子実験自体は順調に推移しており,解析プラットフォームも整備できた.特に感染細菌類の実験は交配実験に利用する集団選定の際に重要なので,引き続き一連の分子実験のい注力する必要がある.
|
今後の研究の推進方策 |
遺伝データの予備解析を実施したところ,北海道中央部を中心とする集団が含まれておらず,進化シナリオを精査する上での障壁になり得ることがわかった.そこで今年度はこれまで解析に含めていない地域の分布調査と標本採集を実施し,現存データに上積みすることで,解析精度を上げていく事に注力する.道南個体群については正規の登山ルートの復旧を待ち,再び特異な染色体構造を持つ隔離集団を採集,飼育し,交配実験を行う予定である.感染微生物についても探索範囲を拡げ,Wolbachia以外の微生物についても調査を実施する.これらを踏まえて行動実験に利用する集団を選定し,交配させる.
|