研究課題/領域番号 |
17H03723
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
谷藤 吾朗 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (70438480)
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研究分担者 |
柏山 祐一郎 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (00611782)
神川 龍馬 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (40627634)
稲垣 祐司 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50387958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非光合成葉緑体 / 比較ゲノム / 光応答 / クリプト生物 / 進化 |
研究実績の概要 |
葉緑体の主機能は光合成だと一般に認識される。しかしながら,二次的に光合成能を消失した生物は真核生物全般に認められ,それらは概して非光合成葉緑体を維持している。それらの非光合成葉緑体は系統によって認識される機能にはばらつきがあり,非光合成葉緑体機能の“一般則”は不明瞭である。本研究では,非光合成のクリプト生物が独立に何度も光合成機能を失っていることに注目し,それらの比較ゲノム解析から光合成消失進化における一般則の解明を目指す。さらに一部の非光合成クリプト生物では光合成色素とは異なる光吸収物質をもつことに着目し,従来全く議論されてこなかった非光合成葉緑体特有の新規な機能の解明を目指してきた。 初年度に非光合成クリプト生物の2株について基礎的なゲノムデータ及びトランスクリプトームデータを取得し,質の良い一次データの取得した。今年度はそれらのアセンブリと評価を終了し,予備的なアノテーションを行った。大まかな比較解析から、非光合成の生物は光合成種に比べて葉緑体ゲノムにコードされるタンパク質の数は減少しているものの,核ゲノムを含む全体としての遺伝情報は増加していることが明らかになった。また,非光合成葉緑体ゲノムの比較からこれまで知られていなかった光合成機能消失に伴うゲノム構造の変化と,近縁種でも独立の進化であれば残存する光合成関連遺伝子が異なることを見出し現在論文として投稿準備中である。さらに栄養状態・光状態の異なる培養株のトランスクリプトームの一次データの取得を今年度行い,ゲノム情報のアノテーションとともに解析を行った。ゲノム情報そのものは大まかなアノテーションは終了しているものの,比較ゲノムを行う前により精査なアノテーションの必要がある。トランスクリプトームの比較解析とともに次年度以降も行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にゲノムシーケンスの高精度DNAが必要量用意できなかったため、研究費の繰越を行った。2019年度にはゲノムシーケンスを行うことができたが、ゲノムデータの構築が遅れたため、予定より若干進歩が遅れている。また、対象生物のゲノムサイズが予想を大きく超えて巨大だったためにゲノムのアセンブリとその評価に予定より遅れが生じた。しかし、他の実験系については大きな遅延はない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、本研究で主な対象としているCryptomonasのアノテーションの精査を含むゲノム解析・葉緑体局在タンパク質の予測を行う。またそれらのデータを下地とした光応答トランスクリプトーム解析を引き続き行う。更に、すでにゲノム情報が公開されている光合成種、および葉緑体を完全に持っていない種との種間比較ゲノム解析を行っていく。
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