研究課題/領域番号 |
17H03726
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 欣也 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (30222186)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Reaction Norm / Social Interaction / Phenotypic Plasticity / Morphometrics / Cannibalism / Hynobius retardatus |
研究実績の概要 |
申請者は、エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)幼生の発育過程で生じる「共食い多型」現象をモデルとして、「集団メンバー個体が有する同一のreaction normが、どのような集団内の相互作用によって、どのような共食い型と非共食い型の表現型集団を生じさせるか?それらは、相互作用が全くないときの個体の表現型とどのように異なるか?」に焦点を当てた実験研究を計画した。 3月19日、エゾサンショウウオ生息地の産卵調査開始。3月30日~4月14日、産卵された卵塊を採集し、実験室で保存。4月下旬から実験の用意にかかった。 複数クラッチから孵化直後の幼生をランダムに選び、飼育タンクに30個体入れた共食いを誘発する高密度処理区と、1個体入れた低密度飼育環境の対照区を設けた。高密度処理区での実験経過に伴って起こった共食い件数を記録し、一定期間ごとに全ての個体を上面と側面から写真撮影をした。 集団内で、共食いを行った個体とそれ以外の個体の形態の分化が進んでいると期待される12日目の個体の写真画像について、高密度処理区の共食いを行った個体とそれ以外、低密度対象区の個体の3つの個体タイプカテゴリーに分けて、幾何学的形態解析の手法で、sizeとshapeの特徴について調べる分析を行った。特に、shape解析では、個体ごとの上方からの頭部のshapeと側面からのshapeの関連性についてPartial Least Square解析法によって分析し、size-shape空間上で3つのタイプの分布を特徴づけた。 形態分析の結果、3つのタイプカテゴリーで形態に差異が見られた。高密度処理区における個体は、頭部と背びれのshapeに高い相関があり、低密度対象区の個体ではそうした相関は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験において、形態発現過程を記録するための写真撮影が十分に行えなかった発生ステージがあり、本種が有するCannibalism Reaction Normに基づき、 発生経過に伴い、実験処理区ごとに、個体と集団が示すであろう形態変化の様相を調べるためのデータ取得が不十分となった。そのため、本年度は、ある程度集団内で形態分化が進んだ、実験期間の最終日(12日目)のみの解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
データ取得について:形態分化発現過程を調べるため、実験開始から日数経過にともなう個体の形態の写真データを確実に取得することに注力する。 データ解析方について:幾何学的形態測定法は、1990年代から理論的面での発展が進んだ。Shapeに関する情報データが球面幾何空間にマップされることが特徴である。現在、多くの分野で応用的に用いられているが、何らかの形パターンの発見や、仮説の検定を行う上で、ユウークリッド空間上に情報データーを変換する。この変換に伴い、パターン探索、仮説検定などの解析場面で、場合に応じて理論的検討・配慮が必要になるが、その方法について十分な研究が行われていない。本研究においても、例えば、12日齢の個体を高密度処理区の共食い個体、非共食い個体、低密度対象区の個体で形態の差異のパターンを探索する場合、そうした問題が生じた。今後、この問題に対する理論的な探求を行う。
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