研究課題/領域番号 |
17H03727
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
彦坂 幸毅 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (10272006)
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研究分担者 |
花田 耕介 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (50462718)
藤井 伸治 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (70272002)
森長 真一 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 局所適応 / 遺伝子流動 / 標高適応 |
研究実績の概要 |
同一種内でも、局所適応により環境勾配にそった形質や遺伝子の変異が生じる。しかし、別の環境からの非適応遺伝子の流入によって局所適応が阻害される場合がある。標高傾度は、空間的距離が近い割に環境変化の勾配が大きく、遺伝子流動による適応阻害が起こりやすい系であると考えられる。本研究では、滋賀県伊吹山の広い標高範囲に生育し、標高に沿った形質変異が見られるハクサンハタザオを材料とし、遺伝子解析、形質評価、数理モデルなどの手法を駆使し、各エコタイプがそれぞれの生育環境にどれだけ最適に近く適応しているかを評価することを試みた。 1)ゲノム解析:伊吹山の連続的な48地点からハクサンハタザオの個体の一部を採取し、全ゲノム解析を行った。試行的に10遺伝子を選択し、その塩基置換にどのような標高依存性があるかを詳細に解析した。その結果、遺伝子間や遺伝子内の塩基によって標高依存パターンが異なり、標高依存的な選択のかかり方が遺伝子によって異なることを見出した。今後はこれら解析をより多くの遺伝子に行い、変異と選択のパターンをより詳細に解析する予定である。 2)形質評価:現地の高・低標高で採取した種子から個体を同じ人工気象室内で異なる栄養条件で育成した。数理モデルを用いて解析した結果、高標高由来の個体が富栄養環境に適応していることを示唆する実験結果を得た。一般に、高標高ほど貧栄養条件であることが多いため、予想に反した結果であった。そこで現地の土壌栄養条件を調べた結果、これも予想に反して高標高ほど富栄養であり、高標高由来の個体は富栄養条件に適応していることが明らかとなった。 3)遺伝子解析:高標高個体や低標高個体に特徴的に見られる塩基置換をもつ遺伝子をシロイヌナズナで強制発現させる実験を行っている。導入がうまくいかない遺伝子があり難航している。うまくいった遺伝子については、実験のために種子を繁殖させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査と遺伝子導入に若干の遅れが認められるが、繰越により問題なく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解析は、10遺伝子で行った解析を100遺伝子以上に拡張し、論文にまとめる予定である。 形質評価については、低温耐性の実験を進めている。 遺伝子導入個体について形質評価を行い、各遺伝子の機能と適応性について研究を進める。
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