研究課題/領域番号 |
17H03729
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高橋 佑磨 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (00707622)
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研究分担者 |
村上 正志 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50312400)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子流動 / 移住荷重 / 適応 / 分布拡大 |
研究実績の概要 |
生物は進化を通じて新たな局所環境に適応することができる。ある種が複数の気候に跨って生息するのは、局所適応の賜物である。このことは、生物は潜在的にはあらゆる環境に分布を拡大できることを意味する。しかし、現実には個々の生物種の分布範囲や分布環境は極めて限定的で、海や山などの物理的障壁がなくとも分布限界が存在する。理論的には、確率的進化(びん首効果や遺伝子流動)により分布辺縁で適応進化が制限されることで分布限界が成立すると考えられる。すなわち、分布限界には「確率的進化と適応進化、生態的動態」の3者相互作用が潜在する。確率的進化による適応の阻害のメカニズムでもっとも有名な例は、遺伝子流動による非適応的な遺伝子を含む遺伝的変異の増加がもたらす遺伝荷重である。一般に、生物は分布の中心ほど密度が高く、辺縁ほど密度や集団サイズが小さい。そのため、分布の中心から辺縁方向に非対称な遺伝子流動が生じる。この遺伝子流動が分布辺縁において遺伝的変異を高め、非適応的な遺伝子の頻度を増大させる。その結果、辺縁集団でのさらなる適応進化(最適化)が阻まれ、分布限界が成立するのである。しかし、このようなプロセスは実証された例は皆無である。本研究では、河川性のチリメンカワニナを材料に、河川内での遺伝子流動が分布辺縁での適応進化に与える影響を検証することを目的とする。勾配が緩やかな河川と、比較的急峻な河川について行なった集団遺伝学的解析では、急峻な河川において頻繁な個体の流入が生じていることが推測された。これらふたつの河川では塩濃度への耐性が異なっており、緩やかな河川の下流域では塩水に対して高い耐性をもつことが明らかとなった。これらの結果は、急峻な川内川では、集団間の遺伝子流動が頻繁に起きており、下流側で適応が阻害されていることを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3河川以上での実地調査をおこない、十分な量のサンプルを得ることがでた。これらのサンプルを用いた詳細な解析は今後行なわれる予定であるが、1年目としては想定通りの進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
得られたサンプルについて、十分な解析は完了していない。今後は、得られたサンプルを材料に形態幾何学的解析や詳細な集団遺伝学的解析を行う予定である。
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