植物群落の高さや群落内の高さ構造の空間的・時間的違いを統一的に理解することは植物生態学の重要な課題である。植物の高さ成長は、光をめぐる軍拡競争であり、高さ成長に伴うベネフィットとコストのバランスによって決まると考えられる。本研究は、生育期間中の日射エネルギーが異なる3つの生態系、熱帯、暖温帯、冷温帯において、樹木がどのように成長し、森林を形成するかを明らかにすることを目的としている。 これまで暖温帯や冷温帯において充実したデータを得ているが、熱帯においては十分なデータを得ていなかったため、熱帯でのデータ取得を目指した。ただし、新型コロナにより海外調査が不可能であったため、代わりとして、亜熱帯である屋久島で集中的な調査を行った。屋久島において、新規の二次遷移プロットを複数作成し、また既存プロットでは、幹直径5cm以上の全ての樹木の樹冠形状(上面・下面高さ、4方向の樹冠径)を測定し、また光の三次元分布計測を行なった。 光の三次元分布と、樹冠分布を重ね合わせることにより、各個体の光獲得量を算出し、成長速度の違いを、光獲得量と光利用効率に分けて解析した。これらの解析から、複数の学術的意義の高い知見が得られ、学会発表を行った。これらのうち、学会のポスター賞を受賞したものが3例あった。その他、森林の生態や構造に関わる派生した研究も行い、学会発表を行なった、 各サイトにおける研究は論文としてまとめつつあり、また、3つの気候帯を比較した統合論文の作成を進めている。
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