研究課題/領域番号 |
17H03741
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岡崎 和伸 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 教授 (70447754)
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研究分担者 |
横山 久代 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 准教授 (10647829)
今井 大喜 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 講師 (40614483)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 体温調節能 / 暑熱環境 / 運動トレーニング |
研究実績の概要 |
申請者らは、高齢者では暑熱環境下における温度感覚が劣化しているうえ、中心血液量の低下に対して“暑さに敏感になる”応答が消失していることを発見し、高齢者が熱中症に陥りやすい新たな生理学的機構の存在を示唆した。本研究では、「高齢者の暑熱環境下における温度感覚の劣化は、循環機能の低下によって引き起こされる」という仮説を検証し(研究1および2)、さらに、「高齢者でも運動・暑熱順応トレーニングと栄養素摂取による血液量の増加によって、循環機能と伴に温度感覚が改善する」ことを実証することを目的とする。本研究の成果から、高齢者の熱中症予防のための科学的根拠に基づいた安全で効果的な実践方法を確立する。本年度は、研究1および研究2に着手した。研究1では、低体力の若年者および高体力の高齢者において、受動加温中に中心血液量を増加および減少させた時の全身の温熱感覚、温熱的快適感、口渇感、皮膚温度感覚の感受性に加え、循環・体温調節機能を測定した。被験者は、全身持久力が該当年齢の標準値-1SD以下の低体力の若年者、および、標準値+1SD以上の高体力の高齢者とし、2群間で体力に差がないようにした。各被験者において、安静時の循環・体温調節機能に加え、全身受動加温時(水循環スーツ、42℃)の循環・体温調節機能(R-R間隔、心拍数、動脈血圧、一回拍出量、深部温、皮膚温、胸部・前腕の皮膚血管コンダクタンスと局所発汗量、中大脳動脈血流度)、全身の温熱感覚、温熱的快適感、皮膚温度感覚の感受性を測定した。研究2の被験者は、全身持久力が該当年齢の標準値±1SDの標準体力、および、標準値-1SD以下の低体力の高齢者とし、研究1の高体力の高齢者を加えて横断的に比較検討した。各研究とも代表者が統括・実験実施し、分担者は実験実施およびデータ解析を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に沿って研究を遂行した。研究1では、若年者10名、高齢者8名の測定を完了した。また、研究2では、高齢者16名の測定を完了し、当初の研究目的を概ね達成した。得られた研究成果から、「高齢者の暑熱環境下における温度感覚の劣化は、循環機能の低下によって引き起こされる」という仮説を支持する結果を得ている。以上、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究実施計画に沿って研究を遂行する。次年度は、研究1および研究2を完了し研究発表および論文発表を進める。さらに、研究3に着手する。研究3の被験者は、全身持久力が該当年齢の標準値±1SDの標準体力、および、標準値-1SD以下の低体力の高齢者(各12名)とし、平成30年度中に12名の測定を完了する。研究3は二重盲験試験とし、被験者を2群(蛋白質・糖質群、プラセボ群、各12名)に分け、10日間の暑熱順応トレーニング(気温36℃、湿度40%、最大酸素摂取量の40%強度、20分×4回/日)を実施する。運動中は心電図、動脈血圧、深部温、皮膚温、胸部・前腕の皮膚血管コンダクタンスと局所発汗量を連続測定し、5分毎に全身の温熱感覚、温熱的快適感、および、口渇感を測定する。また、飲水量を測定し、運動前後の体重変化から総発汗量を算出する。運動終了後5~10分以内に、蛋白質・糖質群は蛋白質・糖質混合物(3.2 kcal/kg、0.18 g蛋白質/kg)を、プラセボ群はプラセボ(0.5 kcal/kg、0 g蛋白質/kg)を摂取する。暑熱順応トレーニング前後に、研究1および2と同様の項目を測定する。各研究とも代表者が統括・実験実施し、分担者は実験実施およびデータ解析を担当する。
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