研究課題
申請者らは、高齢者では暑熱環境下における温度感覚が劣化しているうえ、中心血液量の低下に対して“暑さに敏感になる”応答が消失していることを発見し、高齢者が熱中症に陥りやすい新たな生理学的機構の存在を示唆した。本研究では、「高齢者の暑熱環境下における温度感覚の劣化は、循環機能の低下によって引き起こされる」という仮説を検証し(研究1および2)、さらに、「高齢者でも運動・暑熱順応トレーニングと栄養素摂取による血液量の増加によって、循環機能と伴に温度感覚が改善する」ことを実証すること(研究3)を目的とする。本研究の成果から、高齢者の熱中症予防のための科学的根拠に基づいた安全で効果的な実践方法を確立する。本年度は、研究1および研究2の成果を完了するとともに、研究3を推進した。研究3では、健常な高齢者8名を対象とし、3ヶ月間の持久性トレーニングを実施した。その前後に、各被験者において安静時の循環・体温調節機能に加え、全身受動加温時(水循環スーツ、42℃)の循環・体温調節機能(R-R間隔、心拍数、動脈血圧、一回拍出量、深部温、皮膚温、胸部・前腕の皮膚血管コンダクタンスと局所発汗量)、全身の温熱感覚、温熱的快適感、皮膚温度感覚の感受性を測定した。横断的研究(研究1および2)から得られた研究成果から、「高齢者の暑熱環境下における温度感覚の劣化は、循環機能の低下によって引き起こされる」という仮説を支持する結果を得た。一方、高齢者に対する縦断的研究(研究3)では、高齢者に対する持久性トレーニングによって最大酸素摂取量は向上するが温度感覚の向上を示す結果は得られなかった。各研究とも代表者が統括・実験実施し、分担者は実験実施およびデータ解析を担当した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 11件、 招待講演 5件)
Journal of Applied Physiology
巻: 127 ページ: 1569~1578
10.1152/japplphysiol.00115.2018
European Journal of Applied Physiology
巻: 119 ページ: 1261~1272
10.1007/s00421-019-04118-5
Nutrients
巻: 11 ページ: 868~868
10.3390/nu11040868