研究実績の概要 |
形態改変によるイネの育種を展望して,イネの発生・分化の分子機構の解明を目指して研究を行った。 [1] 葉の発生・形態形成に関しては,CURLED LATER1 (CUR1) 遺伝子の機能解析を行った。cur1 変異体に生じる巻き細葉という表現型は機動細胞や厚壁機械組織の形成が阻害されていることに起因している明らかにするとともに,この変異体が示すユニークな異型葉的な特徴は,花成シグナルを受け花序メリステムに転換する前の茎頂メリステムの性質と関連している可能性が示唆された。CUR1はElongator complex の最大サブユニットをコードしていることを明らかにするとともに,他のサブユニット遺伝子の機能解析も含めて,イネではElongator complexが栄養成長後期の葉の発生に重要なはたらきをしていると結論した。RNAseq 解析から cur1の形態異常は,転写の伸長阻害ではなく,翻訳阻害による可能性が強いこと示す結果が得られた。本研究は論文としてまとめ,投稿中である。なお,査読者のコメントにしたがって, 遺伝子記号を従来用いていたCUL1からCUR1に変更した。 [2] 分げつ形成の制御機構に関しては,腋芽メリステムの形成と腋芽伸長の両面から研究を行った。腋芽形成のかなり早い時期に幹細胞が確立すること,腋芽形成時に幹細胞はTAB1によって正に,FON2によって負に制御されていることを明らかにした。また,tab1変異はfon2によって部分的に相補されるが,この相補にはTAB1と近縁なWOX4遺伝子が関与していることを示した。また,茎頂メリステムの未分化細胞を制御するOSH1も腋芽形成時重要なはたらきをしていることを明らかにした。これらの研究は,2つの論文として発表した。 腋芽伸長の抑制変異体であるted1の詳細な表現型を解析するとともに,原因遺伝子を同定し,遺伝子破壊によりこれを確認した。
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