現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉緑体と大腸菌のシャトルベクターに利用可能な複製起点が、タバコの葉緑体ゲノムのミニサークル以外の領域にも存在するかを探るため、今年度は以下の実験を行った。タバコの葉から葉緑体DNAを単離し、制限酵素SacI及びXhoIで二重消化し、大腸菌のプラスミドベクターに挿入した。その結果、これまでに計14種類の異なる葉緑体DNA断片をクローニングすることができた。 得られたプラスミドを、3種類ずつ混合し、パーティクルガン法によりタバコの葉へ撃ち込んだところ、形質転換体が得られたプラスミドのセットが存在した。具体的に、各セットを36回ずつタバコの葉に撃ち込んだところ、a,k,mと名付けた葉緑体DNA断片を持つプラスミドのセットから6個体、d,e,m、f,j,l、b,c,gの各セットからそれぞれ1個体ずつ形質転換体を得ることができた。 各形質転換体の葉から全DNAを抽出し、大腸菌へトランスフォームしたところ、9個体の全DNAのうち7個体のDNAで、多数のアンピシリン耐性コロニーを観察することができた。得られたコロニーについて、コロニーPCR及びシークエンシングにより、プラスミドが持つ葉緑体DNA断片の特定を行った。その結果、断片mを持つもの、jを持つもの、eあるいはmを持つもの、kあるいはmを持つものの4種類が存在することがわかった。 これら形質転換体に維持されていた葉緑体DNA断片をシークエンシングにより解析したところ、断片jとkはミニサークルに含まれる配列であったが、断片eとmはミニサークルには含まれていない配列であった。これらの結果から、葉緑体ゲノムには、複製起点として働く配列が複数存在していることが示唆された。 以上、シャトルベクターを構築することができたこと、葉緑体の複製起点に関する新知見が得られたことから、本研究は順調に進展していると考えられる。
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