研究実績の概要 |
本課題代表者はこれまでイネの初期胚形成機構の解析を行ってきた。最近この過程で、「初期胚ではRNAが極めて不安定化する現象」を発見した。動物の初期胚では母性RNAの分解とそれに続く胚性遺伝子の活性化機構に関する解析が進んでいるが、植物では現象そのものの記述もほとんどなく未開拓の分野である。本申請研究では、植物において初めてとなる母性RNAの分解機構を明らかにし、その植物初期発生における意義を明らかにする。さらに、種子中の胚に蓄積する有用成分等の含量制御へ、母性RNAの分解制御と胚性遺伝子の活性化機構の利用を検討することにより、植物遺伝育種科学分野への貢献を目指す。平成29年度は、イネ初期胚で発現することが予想される複数の遺伝子について、0DAP, 1DAP, 2DAPでの発現解析を行った。その結果、初期胚での発現が検出できるプローブとそうでないプローブが存在することが判明した。このことから、イネ初期胚においては、選択的に一部のRNAは分解されていることが予想された。また、LMD法ならびに、マイクロピペットを用いた方法により、0DAP, 1DAP, 2DAPの胚サンプリングの条件検討を行った。その結果、LMD法では、2DAP以降で微量のRNAが回収できることが判明した。一方、0DAP, 1DAPでは、LMD法でのRNA抽出は無可能との結論に至った。マイクロピペットによる0DAPの回収については、実績のある研究者から方法を伝授してもらい、ある程度サンプリングができる体制が整った。1DAPについては、引き続き工夫が必要な状況にある。
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