研究実績の概要 |
本研究ではイネ種子成熟における遺伝子発現制御の全容解明に向けて、遺伝子発現のトランス制御因子である転写因子による遺伝子発現制御ネットワークを明らかにすることを目的としている。具体的には種子で発現している転写因子を小麦胚芽抽出液系で合成し、その転写因子が結合するゲノム断片を濃縮し、次世代シークエンサーで解析するDAP-seqを行う。今年度は前年度に作成したイネ転写因子タンパク質合成用クローンライブラリーを増幅し、480転写因子についてDAP-seqを行った。前年度に行った予備実験ではピークが得られる率は50%程度であったが、ピークが得られる率は約30%であり、原報(O'malley et al, 2016 Cell)と同程度であった。前年度にRISBZ1は種子貯蔵タンパク質上流に保存されているGCN4モチーフに結合するが、ゲノムワイドには、ACGTを含む典型的なbZIP転写因子の認識配列に結合する割合が高いことを明らかにしていた。RISBZ1のパラログであるRISBZ2のDAP-seqを行った結果、RISBZ2はGCN4モチーフを含む領域には結合しなかった。RISBZ1ホモログであるRISBZ3でも同様の結果が得られた。完全長のRISBZ2、RISBZ3はGCN4モチーフに結合しないが(DAP-seq)、bZIPドメインのみであればGCN4モチーフに結合することから(EMSA; Onodera et al, 1999, JBC)、RISBZ2およびRISBZ3はbZIPドメイン外にGCN4との結合を阻害する構造を有することが示唆された。これらのことは大規模なDAP-seqの結果から転写因子の構造に関する知見が得られることを示している。
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