研究課題/領域番号 |
17H03756
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
森田 明雄 静岡大学, 農学部, 教授 (20324337)
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研究分担者 |
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
荻野 暁子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (70370567)
古川 一実 沼津工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90353151)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 茶 / ニコチン / 工芸作物 |
研究実績の概要 |
これまでの研究により,茶葉から検出されたニコチンの起源については,内因性である可能性が高いことが示唆されたが,直接的な確証は得られていない.そこで,まず平成29年度は次世代シークエンサーによるチャのニコチン生合成に関連するさらなる遺伝子の単離を試みた.HiseqシステムによりとチャのmRNA配列データベースを構築し,ニコチン生合成関連遺伝子群 (CsPMT,CsQPT,CsMPO,CsODC,CsQS) の配列取得を試みた.その結果,CsPMTについては,Hiseqシステムを用いてもそのオーソログを検出することができず,その他遺伝子についても更なるオーソログの検出はできなかった.一方,CsODC配列についてチャの標準連鎖地図へマッピングしたところ,第1連鎖群(LG01)にマッピングできた. 次に,チャの遺伝資源 (コアコレクション) の季節別および部位別におけるニコチン含量の差異を調査し,2年分のデータが蓄積できた.現在までに,季節間におけるニコチン含量の変動・分離パターンから,少数の遺伝子によりニコチンの生合成が支配されている可能性が示唆されている. 一方,チャのニコチン生合成に関わる遺伝子組換え体を作製するための更なる条件検討を,ボンバードメント法およびアグロバクテリウム法により行った.その結果,ボンバードメント法では高濃度のマンニトールを添加した培地で前培養した不定胚ほど多くの形質転換体が得られ,最も効果的な導入法は直径1.0 μmの金粒子を圧力1100 psiで導入することであると判明した.また,アグロバクテリウム法ではカテキン類含量が多いほど,菌の感染能力が阻害されることがわかり,実生を用いた効率的な感染法の確立が見込まれている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HiSeqシステムを用いたmRNAのデータベース構築が順調に進んでおり,多くの有益な情報を得ることができた.また,それらの配列情報を用いて連鎖地図へのマッピングも進んでいる.茶園でのサンプリングは概ね順調に遂行でき,定量実験も順調に行っている. チャ組換え体の作製については,ボンバードメント法およびアグロバクテリウム法による検討が概ね順調に進んでいる.ボンバードメント法によるチャ不定胚への最適遺伝子導入条件は,マンニトール0.4 Mで24時間前培養した不定胚に,遺伝子を付着させた直径1.0 μmの金粒子を圧力1100 psiで導入することであることを明らかにできた.また,このプロセスにより50日以内にチャの形質転換体が作出可能となり,既存の培養と比較し培養期間を約50日短縮することができた.アグロバクテリウム法についてはチャ実生への感染条件を検討し,いくつかの組換え毛状根を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までと同様に,コアコレクションのニコチン含量の変動を調査するとともに,ニコチン生合成に関与する前駆体物質の投与試験を行ない,鍵物質と鍵遺伝子の推定を行なう.また,まだマッピングできていない4種類のニコチン合成酵素遺伝子のマッピングを進めるとともに,コアコレクションのニコチン含有量の多寡と各合成酵素遺伝子の遺伝子型に相関がないか検討する. 一方,本研究により開発したボンバードメント法によるチャ不定胚の形質転換系は,チャの培養状態を良好に保ちつつ短期間で高効率に形質転換体を作出できると考えられる.そこで,本形質転換プロセスを用い,ニコチン生合成に関与する酵素タンパクや遺伝子のノックインやノックアウト変異体の作出を進める.
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