研究課題
胚乳細胞は貯蔵タンパク質を活発に生合成し、登熟期、ジスルフィド結合の形成(システイン残基側鎖スルフヒドリル基の酸化反応)により大量かつ安定なタンパク質蓄積を可能とし、続く発芽期、ジスルフィド結合の開裂(還元反応)によりタンパク質分解と次世代への栄養供給を実現する。イネ貯蔵タンパク質のジスルフィド結合形成は小胞体局在ジスルフィド産生酵素(例えば、フラボ酵素ERO1)及びジスルフィド伝達酵素(例えば、プロテインジスルフィドイソメラーゼPDI)から構築される複数の電子伝達系の駆動により実行される。イネ胚乳細胞の生長・成熟において小胞体ジスルフィド産生・伝達系の駆動が重要な役割を担うことがわかってきた。平成29年度はコメの生産能と品質を決定する環境変動下、イネ胚乳細胞の生長・成熟と小胞体レドックス環境の構築・動態について生化学的・細胞生物学的解析を進めた。イネ胚乳細胞では物理化学的に多様な特性を有する貯蔵タンパク質群(プロラミンやグルテリン)が活発に生合成され、小胞体において正しいジスルフィド結合を獲得後、二種の異なるタンパク質貯蔵オルガネラ(プロテインボディ)に分別集積・輸送される。環境変動下では、小胞体におけるジスルフィド産生・伝達系の駆動と最適なレドックス環境の構築が阻害され、結果、貯蔵タンパク質の集積・輸送異常とタンパク質貯蔵オルガネラの発達阻害が誘導された。細胞非破壊条件下、質量分析法による細胞・オルガネラ代謝挙動の解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
環境変動下、イネ胚乳における細胞生長・成熟と小胞体レドックス環境の構築・動態について生化学的・細胞生物学的解析を行った。細胞非破壊条件下、質量分析法による細胞・オルガネラ代謝挙動解析も並行して進展している。得られた結果を取りまとめ、国内・国際学会にて研究発表を行った。
平成29年度の研究成果に基づき、平成30年度は小胞体-細胞膜系の視点から、イネにおける環境情報伝達と細胞代謝・生長の制御機構を生化学的・分子細胞生物学的解析により調べる。また、質量分析法によるin situ細胞・オルガネラ代謝解析を進める。
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