研究課題
イネ細胞の生長と成熟の制御において小胞体ジスルフィド産生・伝達系は重要な役割を担う。一連の蛋白質折り畳み過程の中でジスルフィド結合の形成・開裂反応は細胞内外環境の変化に応じて精巧に調節される。ジスルフィド産生・伝達ネットワークは多様な酸化還元酵素蛋白質群(例えば、フラボ酵素ERO1やプロテインジスルフィドイソメラーゼPDI)より構成されており、細胞内外環境の変動に応じて電子分配を調整し、細胞の生長と成熟を達成していると考えられる。コメの生産能と品質を決定する環境変動下、小胞体酸化還元系の動的駆動制御の分子機構を明らかにすることを目的として、平成30年度はイネにおける酸化還元反応基盤の構築とジスルフィド産生・伝達系の駆動制御について生化学的・分子生物学的・細胞生理学的解析を進めた。まず、細胞非破壊条件下、質量分析法を用いて細胞代謝産物(グルタチオンを含む)を一細胞レベルでリアルタイム解析し、アッセイ系を構築することに成功した。次に、環境条件(水や無機栄養)変動下、小胞体局在ジスルフィド産生・伝達蛋白質の酵素活性を解析した。その結果、細胞外環境条件の変化に応じて小胞体ジスルフィド代謝系(過酸化水素の発生を伴う)がプラスチド酸化還元系(無機物同化反応を駆動する)と共に駆動制御される可能性が示唆された。イネの細胞生長・成熟過程における細胞・オルガネラ酸化還元代謝の時間的・空間的制御機構について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
質量分析法を用い、イネ細胞代謝挙動のリアルタイム解析系を構築した。細胞外環境条件変動下、イネにおけるオルガネラ(小胞体やプラスチド等)酸化還元代謝系の駆動制御について生化学的・分子生物学的・細胞生理学的解析を行った。
平成30年度の研究成果に基づき、令和元年度はイネ細胞生長・成熟過程における細胞・オルガネラ酸化還元代謝の時間的・空間的制御機構を明らかにする。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Journal of Experimental Botany
巻: 70 ページ: 1299-1311
10.1093/jxb/ery427
Planta
巻: 248 ページ: 1263-1275
10.1007/s00425-018-2975-x