研究課題/領域番号 |
17H03763
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石川 雅也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (90355727)
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研究分担者 |
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50211884)
寺田 康彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20400640)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 耐寒性 / 水 / 凍結制御 / MRI / 氷核活性 / 凍結傷害 / イメージング / 凍結過程 |
研究実績の概要 |
水分豊富な植物組織にとって凍結は最も危険なストレスである。果樹・花卉の花芽等の複雑な越冬器官が組織水の凍結をどのように制御して、致死的な細胞内凍結を回避しているか(凍結様式および凍結制御機構)は重要な耐寒性機構である。このメカニズムは凍霜害防除や凍結制御機構の基礎・応用研究に重要であるが、詳細はほとんど判っていない。本研究では、この凍結挙動の動態解明と機構解析のため、最新高分解能MRIなど による凍結挙動の高感度可視化解析法を確立することを目標としている。今年度は以下のことを行った。 ①豪州Western Sydney大において、Price氏らの協力の下、最新高分解能MRI(600MHz)による植物器官の凍結挙動の高感度・高速・3D可視化解析法の確立を目指し、実際の解析を行いながら更に詳細な条件を決める試行錯誤を繰り返した。植物各組織の高解像度を得つつ、最小の時間で、観察したい動態・現象を観察できる条件を探した。1) 花芽、葉芽等数種の3D凍結挙動可視化解析にも成功した 2)レンギョウ枝の 高速撮像により、Semi-real time 解析により、複雑器官である枝等の凍結開始・伝搬や凍る順番(凍結順位)等の解析を行うことに成功した。3) 未凍結組織の過冷却が破れる瞬間(凍霜害発生)がどのようにして生じるのか冬芽を使った解析を行った。 ②X線micro CTを用いて、MRI解析を行った同じサンプルを可視化した。構造物によってはMRIのほうがよりよく可視化されることも分かった。 ③MRIやIR法で解明された複雑器官の凍結挙動や凍結順位の機構を解明するため、氷核活性の組織分布や示差熱分析による解析したところ、凍結順位や凍結様式と高い整合性があった。 ④国内で利用可能な、比較的大型試料用の温度可変可能(-10℃程度まで)な超電導MRIが完成し(筑波大寺田研)、植物試料の凍結挙動の可視化の予備的観察を行ったところ、良い結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 Western Sydney大の協力により、高分解能MRIを用いて、限られたマシンタイムの中で、条件設定を行いながら、花芽、葉芽等の3D凍結挙動可視化解析と高速撮像によるSemi-real time 解析を行うことができた。昨年より、更に明瞭な画像が得られるようになり、本手法が凍結様式や凍結過程の解析に非常に有用であることがわかった。国内で利用可能なMRIが筑波大寺田研に出来上がったのも、大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
Western Sydney大のMRIについては、冷却装置の一部が破損するなどのアクシデントや、試料Probe内の温度分布などの問題などもあることがわかった。撮像条件についてもまだ改善の余地はある。限られたマシンタイムではあるが、引き続き、3D凍結挙動可視化解析と高速撮像によるSemi-real time 凍結過程解析に関して、さらに詳細な条件検討を行う一方、また、実際のサンプルを更に観察し、再現性や問題点などを解決し、手法として確立していく予定である。 筑波大のMRIも用いて、大型冬芽などの観察を進める予定である。
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