令和2年度は、前年度に引き続き、160系統のアサガオ集団(コアコレクション)を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、開花時刻および花弁老化の系統間差異に関わる遺伝子候補の検出を行った。具体的には、1)コアコレクションを網室で1回、恒温室内で3回ずつ栽培し、各系統について「花の寿命」の決定要因となっている‘開花時刻’や‘花弁老化’に関する形質データを得た。2)本年度および前年度に得た形質データと、平成29年度にRAD-Seq法で検出した160系統間の一塩基多型(SNP)情報を用いてGWASを実施し、開花時刻や花弁老化の系統間差異との関連が強く示唆されるSNPおよび遺伝子を検出し、花の寿命が決定される分子機能の解明に繋がる手掛かりを得た。3)GWASで検出したSNPを含む遺伝子およびその近傍に存在する遺伝子が「花の寿命」の系統間差異に関与することを証明するため、CRISPR/Cas9システムにより当該遺伝子の機能を破壊したアサガオ系統を作出することを試みた。 上記の他に、前年度および本年度に得たアサガオ160系統の花弁老化および種子生産性に関する形質データに基づき、両者の相関性を調査したところ、両者の間には前年度と同様に負の相関関係が認められた。また、アサガオだけでなく、ペチュニアでも、エチレンやエテホン処理により花弁老化を促進すると、1花および個体あたりの種子数が増加することを確認し、花の寿命が種子の生産性に密接に関わることをはじめて明らかにした。さらに、開花時刻および花弁老化に顕著な差異が認められた系統間で交雑を行い、QTL-seq法により「花の寿命」に関与する遺伝子を新規に探索するための解析集団を新たに作成した。
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