研究課題/領域番号 |
17H03767
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
間 竜太郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, ユニット長 (60355716)
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研究分担者 |
佐々木 克友 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 上級研究員 (60469830)
野田 尚信 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 上級研究員 (10455313)
能岡 智 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 主任研究員 (80391407)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子組換え / キク / 花色 / 不稔化 / 周縁キメラ |
研究実績の概要 |
1.キククラスC遺伝子をターゲットとした不稔化技術の開発 まず、キク品種‘セイマリン’のキククラスC遺伝子の配列情報を解析し、アミノ酸配列が異なる2種類のクラスC遺伝子の存在を確認した。次に、CRES-T法あるいはRNAi法により2種類のクラスC遺伝子の発現を同時に抑制するためのコンストラクトを作成した。プロモーターとしては、キククラスC遺伝子の第二イントロン配列(CRES-T法)、あるいは、キクアクチン遺伝子CmACT2のプロモーター(RNAi法)を利用した。これらのコンストラクトを‘セイマリン’に導入した結果、両手法ともに、雄蕊および雌蕊が花弁化したキク組換え体の獲得に成功した。H29年度はモデル系統として白花品種を用いたが、現在、青いキク実用化のために選抜した商品性に優れたホスト候補系統への遺伝子導入を実施している。 2.L1周縁キメラを利用した交雑リスク低減手法の確立 既に作出したL1層にのみ蛍光蛋白質遺伝子を持つ周縁キメラキクの花器官における蛍光細胞の分布を調査した結果、L1層由来細胞は花梗、花托、花弁、花糸、葯等の表皮細胞を構成することが示された。生殖細胞が存在する花粉及び胚珠の胚のう部分については、全層に蛍光タンパク質遺伝子を持つ形質転換体においても蛍光は観察されず、L1層由来細胞が雌性、雄性生殖細胞を構成するか不明であった。交雑試験の結果、L1層にのみ蛍光タンパク質遺伝子を持つキクを種子親及び花粉親として得た後代植物に、蛍光を示す個体は全く無かった。一方、全層に蛍光タンパク質遺伝子を持つ形質転換体を種子親及び花粉親に用いた場合には蛍光が観察され、導入遺伝子の遺伝が確認された。これらの結果から、L1層に導入した外来遺伝子は後代に伝達されず、L1層由来細胞は雌性、雄性生殖細胞ともに構成しないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キククラスC遺伝子をターゲットとした不稔化技術の開発に関しては、キク品種‘セイマリン’のクラスC遺伝子をCRES-T法あるいはRNAi法により抑制することで、雄蕊および雌蕊が花弁化したキク組換え体の獲得に成功した。また、L1周縁キメラを利用した交雑リスク低減手法の確立に関しては、L1層に導入した外来遺伝子は後代に伝達されず、L1層由来細胞は雌性、雄性生殖細胞ともに構成しないことを明らかにした。これらの成果をふまえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
キククラスC遺伝子をターゲットとした不稔化技術の開発に関しては、青いキク実用化のために選抜した商品性に優れたホスト候補系統に遺伝子導入を行い、得られた形質転換体を閉鎖系温室で育成・開花させて、花器官の形態・稔性やクラスC遺伝子の発現を調査する。調査結果より、キク完全不稔化のための抑制ターゲット遺伝子及び使用するプロモーターを特定する。完全不稔キクの作出手法が明らかになったら、不稔キクの作出効率を考慮した上で、①不稔キク系統への青色化遺伝子の導入、②青色系統への不稔用遺伝子の導入、③不稔化遺伝子と青色化遺伝子をタンデムに配置したコンストラクトを作成して導入、のいずれかの手法を用いて、青色花かつ不稔のキク系統(実用化候補系統)の作出に着手する。また、L1周縁キメラを利用した交雑リスク低減手法の確立に関しては、 L1層に導入した外来遺伝子の遺伝性に関与する周縁キメラの層構造の安定性について調査し、周縁キメラを利用した交雑リスク低減手法の適用可能性についてさらに検討を進める。
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