研究課題/領域番号 |
17H03769
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研究機関 | 公益財団法人かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
平川 英樹 公益財団法人かずさDNA研究所, 技術開発研究部, グループ長 (80372746)
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研究分担者 |
細川 宗孝 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40301246)
白澤 健太 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究部, 主任研究員 (60527026)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 花の模様形成 / エピジェネティックス / ゲノム解読 / RNA-Seq解析 / microRNA / データベース |
研究実績の概要 |
セントポーリア(Saintpaulia ionantha)の全ゲノムDNAメチル化解析を行うため、セントポーリアの全ゲノム配列を解読した。対象は品種キラウェアの半数体とした。セントポーリアのゲノムサイズを調べるため、イルミナ社製MiSeqにより2ラン分のシークエンシングを行い、kmer頻度解析を行った結果、848 Mbと推測した。Pacific Biosciences社製Sequelにより12セル分(84.5x)のシークエンシングを行い、FALCONを用いてアセンブルを行い、さらにFALCON-Unzipによりフェージングを行った後、Arrowにより補正を行った。その結果、3,221本のprimaryコンティグ(総延長:704 Mb、N50長:1.25 Mb)と1,508本のassociateコンティグ(総延長:121 Mb、N50長:131 Kb)を得た。シークエンシングに用いた個体は半数体であるため、primaryとassociateコンティグを合わせた4,729本の配列(総延長:825 Mb)を最終配列とした。これに対してBUSCOの保存性を調べたところ、88.1%が完全に保存されており遺伝子の網羅性が高いことが分かった。セントポーリアにおける花模様形成がエピジェネティックな制御によるものか否かを調べるため、キラウェアの縞花の白部と青部、白花と青花、品種チコの青花と白花に対してHiSeqとMiSeqによりRNAとmicroRNA(miRNA)のシークエンシングを行った。得られたRNAに対してTrinitiyによりアセンブルした結果、36,670本のunigene(総延長:42.3 Mb、N50長:2 kb)を得た。シークエンスしたRNAとmiRNAをunigeneに対してマッピングすることで発現量の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セントポーリアの全ゲノム配列解読に関して、当初はPacific Biosciences社製PacBio RSIIから得たリードをCanuでde novoアセンブルし、イルミナ社製HiSeqリードを用いてPacBioToCAで補正する方法とPacBioリードとHiSeqリードをDBG2OLCでハイブリッドアセンブルする方法の2通りを実施する予定であったが、Sequelにより80x以上の十分なリードを得ることができたため、Sequelリードのみに対してFALCONとFALCON-Unzip、Arrowを用いてde novoアセンブルする方針に変更した。その結果、推定ゲノムサイズ848 Mbに近い4,729本の配列(総延長:825 Mb)を得た。また、遺伝子の網羅性も高かったことからアセンブルの精度は十分であり、予定通りにゲノム配列を解読することができた。平成29年度は遺伝子予測まで完了させる予定であったが、複数器官から発現データを得た方が高い予測精度が得られると判断したため、現在サンプリングを行っているところである。これらのデータが得られ次第、遺伝子予測に取り掛かる。一方、花の模様形成がエピジェネティックな制御を受けているか否かを調べるため、RNAの発現データとメチル化データの両方を得る予定であったが、まずはこれまでに得られたRNAデータからunigeneを構築し、それに対してRNAとmiRNAをマッピングすることでキラウェアとチコ間での発現の違いを調べた。しかしunigeneに対するマップ率が低かったため、アセンブルされたゲノム配列に対してマッピングしたところ、キラウェアとチコの両方でマップ率が上昇した。現在、キラウェアとチコ間で発現の違いを調べている。
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今後の研究の推進方策 |
セントポーリアのゲノム配列を解読することができたため、今後は複数器官から得られたRNA-Seqデータを用いて遺伝子予測や機能推定といったアノテーションを行う。一方、キラウェア一個体の不定芽由来の複数の植物から親と同じ縞模様が出現した個体、縞が逆転した個体、まだら模様の個体、L1層あるいはL2層の表現型となった単色個体を選抜し、L1層と同一の単色個体と L2層と同一の単色個体の2つの花弁についてbisulfite sequencing(BS-Seq)ライブラリを作製する。これらの各部位からRNAおよびmiRNAを得た後、ゲノム配列にマップし各個体におけるメチル化状態および転写発現を定量化する。親個体あるいは各変異個体の花弁においてL1層あるいはL2層の花色の部位を切り分けメチル化状態および転写発現を比較する。マイクロダイセクション法で茎頂分裂組織と花弁組織を収集し、メチル化状態およびRNAの転写発現を定量化する。また、同一個体の経時的なメチル化解析を行うことで茎頂分裂組織あるいは分化・発達においてメチル化が生じる時期を調べる。これらのデータを得た後、共発現解析によりメチル化状態および転写発現のネットワーク解析を行う。ネットワーク解析は(1) L1層と同一の表現型と(2) L1層と異なる表現型の2つの部位に分けて行うことで2つの表現型に特異的な全エピゲノムおよび発現遺伝子ネットワークを明らかにする。表現型に特異的なネットワークを形成する遺伝子が集中する経路を同定し、表現型の発現に重要な役割を担う代謝、シグナル伝達、遺伝情報等を明らかにする。全エピゲノムと表現型とのアソシエーション解析(EWAS)およびRNA転写発現の定量データと表現型とのアソシエーション解析(TWAS)を実施し、表現型に重要な役割を担う全エピゲノムおよび転写発現を明らかにする。
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