植物免疫研究は食料増産に向けた重要研究領域であり、最初期過程である植物による病原体認識については重点的に解明されているが、植物免疫応答が最終的にどのように病原体に作用して感染を抑制するかについてはほとんど解明されていない。本研究ではウイルスに対する主要な植物免疫応答であるRNAサイレンシング、レクチン抵抗性、劣性抵抗性を対象とし、それぞれの植物免疫応答によるウイルス感染阻害の作用点を明らかにすることを目指す。ウイルスに対する植物免疫応答の作用点を特異的に同定するためには、ウイルスの感染を詳細なステップに分割し、それぞれの植物免疫応答がどのステップを阻害するかを検出することが必要である。平成29年度はIn vitro実験系、イメージング系などを用いて、植物ウイルス感染ステップの分子解剖を行った。まずは、植物ウイルスを用いたin vitro実験系において、宿主膜画分を除去した抽出液中での翻訳反応を行うことにより(1)ウイルスタンパク質翻訳を行い、スクロース密度勾配遠心により(2)ウイルス複製酵素複合体を特異的に検出し、in vitro翻訳系に再度膜画分を添加することにより(3)ウイルス複製工場形成を行った。これらを組み合わせることにより3つのウイルス感染ステップを識別することが可能となった。また、蛍光タンパク質を用いたライブイメージングによりそれぞれのステップにおけるウイルスタンパク質の細胞内動態を詳細に観察した。
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