• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

MAPキナーゼセンサーによる植物免疫シグナルの可視化

研究課題

研究課題/領域番号 17H03772
研究機関名古屋大学

研究代表者

吉岡 博文  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30240245)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードMAPキナーゼ / バイオセンサー / 植物免疫
研究実績の概要

植物の生体防御システムには、一過的な応答であるPTI (Pattern-triggered immunity)と持続的で細胞死を伴うETI (Effector-triggered immunity) による2段階の免疫応答が存在する。いずれの場合もMAPキナーゼ (MAPK) が重要な役割を果たしているが、感染現場での活性化動態は不明である。申請者は、時空間的に細胞・組織レベルでMAPK活性動向をモニターするバイオセンサーの開発に成功した。実際の感染現場においては、被感染細胞のみでなく、周辺細胞による集団協調的な生体防御機構によって防御が実行されるが、その実態は依然として不明である。そこで、バイオセンサーを用いて病原菌の感染に応答したMAPK活性を可視化することによって、集団協調的な生体防御機構の実態を理解することを目的とした。本研究では、病原菌の感染に応答したMAPK活性を可視化することによって、PTIおよびETIにおける新たなシグナルネットワークの発掘を可能にする先駆的モデル系を提示する。
植物にバイオセンサーを導入したモニター植物には、YFPのコドンを置換した変異体、HSP90ターミネーターを採用した。また、pGreenベクターはゲノム内に多コピー導入されないことが示されており、複数コピー導入による遺伝子のサイレンシングを回避することが期待される。センサーのC末端に核外輸送シグナル(NES) あるいは核局在シグナル (NLS) を付加した。これら2つのバイオセンサーによって、細胞質基質や核でMAPK活性の動態をモニターすることができる。
平成30年度は、C末端にNESを付加したMAPKセンサーをシロイネナズナを形質転換したところ、多数の再生個体を得ることができた。さらに、これらの個体からMAPKセンサーの発現が良好な個体を選抜することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

植物免疫においてはMAPKカスケードが重要な役割を担っており、ベンサミアナタバコでは、病害応答性MAPKとしてSIPKとWIPKが同定されている。申請者はこれまでに、ベンサミアナタバコのSIPK/WIPKのリン酸化基質として、WRKY型転写因子であるWRKY8を同定した。WRKY8のN末端領域には、リン酸化の標的となる集積したSP配列 (SPクラスター)が存在する。本研究課題では、時空間的に細胞・組織レベルでMAPK活性動向をモニターするバイオセンサーを開発し、実際に病原菌が感染した細胞およびその周辺細胞による集団協調的な生体防御機構の実態を理解することを目的とした。本MAPKバイオセンサーは、WRKY8由来のDドメインとSPクラスター、ヒト由来のリン酸化セリン認識ドメイン (Pin1 WW)、そしてYFPとCFPを両端に連結した構造である。SPクラスターがMAPKにリン酸化されると、蛍光共鳴エネルギー移動 (Fluorescence Resonance Energy Transfer : FRET) が起こり、MAPK活性が蛍光シグナルとして観察できるようになる。
本年度は、C末端にNESを付加したMAPKセンサーをシロイネナズナを形質転換したところ、多数の再生個体を得ることができた。さらに、これらの個体を細菌のべん毛タンパク質に由来するflg22で処理し、センサーの発現量およびリン酸化状態を抗体で検出することによって、MAPKセンサーが良好に機能する個体を選抜することができた。これらの結果は、本モニター植物を用いることによって、時空間的にMAPK活性を観察することが可能であることを示している。

今後の研究の推進方策

平成30年度は、MAPKセンサーのC末端に核外輸送シグナル(NES) を付加し、シロイネナズナを形質転換したところ、多数の再生個体を得ることができた。これらの個体を細菌のべん毛タンパク質に由来するflg22で処理し、センサーの発現量およびリン酸化状態を抗体で検出することによって、MAPKセンサーが良好に機能する個体を選抜することができた。これらの結果は、本モニター植物を用いることによって、時空間的にMAPK活性を観察することが可能であることを示している。今後、アブラナ科炭疽病菌 (Colletotrichum higginsianum) に対するMAPKの活性動態について、時空間的に蛍光顕微鏡あるいは共焦点レーザー顕微鏡で観察する予定である。
さらに、本バイオセンサーを導入したベンサミアナ葉に、ジャガイモ疫病菌、ウリ類炭疽病菌 (Colletotrichum orbiculare)、灰色かび病菌 (Botrytis cinerea)を接種してFRET蛍光を観察する予定である。また、ジャガイモ疫病菌 (Phytophthora infestans)に対する抵抗性遺伝子であるRpi-blb2を形質転換したベンサミアナタバコ葉に、Avrblb2を持つ疫病菌を接種することで細胞死を伴うETI反応を誘導し、侵入細胞と近接細胞におけるFRET蛍光を観察する。これらの一連の観察によって、PTIおよびETIにおけるMAPKの活性動態を明らかにする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 植物免疫応答における光合成活性抑制は葉緑体のROS生産を誘導する2019

    • 著者名/発表者名
      小川尊也・安達広明・吉岡美樹・ 杉浦大輔・吉岡博文
    • 学会等名
      第60回日本植物生理学会大会
  • [学会発表] 細胞死に連動する植物免疫応答では葉緑体の ROS 生産が誘導される2019

    • 著者名/発表者名
      小川尊也・安達広明・吉岡美樹・ 杉浦大輔・吉岡博文
    • 学会等名
      平成31年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] ニジュウヤホシテントウの食害による MAPK 活性の時空間的動態2019

    • 著者名/発表者名
      岩田啓一朗・高橋来人・千賀紀尚・ 安達広明・石濱伸明・吉岡美樹・ 近藤竜彦・吉岡博文
    • 学会等名
      平成31年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] WRKYs phosphorylated by MAPK regulate chloroplast-mediated ROS burst in plant immunity2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka, H., Adachi, H., Ishihama, N., Belhaj, K., Takano, Y., Kamoun, S., Sato, M. and Yoshioka, M.
    • 学会等名
      International Congress of Plant Pathology (ICPP) 2018
  • [学会発表] Plant immunity mediated by MAPK-WRKY phosphorylation pathway2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka, H
    • 学会等名
      2018 International Symposium on Agricultural Biotechnology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 植物免疫学研究室

    • URL

      http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/%7ebio4283/index.html

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi