研究課題/領域番号 |
17H03773
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
曵地 康史 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (70291507)
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研究分担者 |
甲斐 建次 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (40508404)
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50211800)
木場 章範 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50343314)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 青枯病菌 / マッシュルーム型バイオフィルム / ラルフラノン / LecM |
研究実績の概要 |
平成29年度に開発した、トマト植物から抽出した細胞間隙液を培養液としてナノパーコレーター上で培養した青枯病菌細胞集団を走査電子顕微鏡したで観察することにより、青枯病菌によるマッシュルーム型バイオフィルム(mBF)形成能を質量的に解析しうるモデル実験系を用いて、細胞間隙環境における青枯病菌菌株によるmBF形成能を時系列的に観察した。親株であるOE1-1株に比較して、RS-IIL産生能喪失株(ΔlecM)のナノパーコレーター上への固着能は著しく低下し、マイクロコロニー形成能と成熟したmBF形成能も著しく低下した。すなわち、RS-IILは青枯病菌の固相面への固着に関与しており、その結果、mBF形成に関わると考えられた。 RS-IIL産生は、青枯病菌が自ら産生し、菌体外に分泌する3-hydroxymyristate認知により起動するクオラムセンシング(phc QS)により誘導される。RS-IILのphcQSのシグナル伝達系への関与について解析したところ、RS-IILが菌体外に分泌された3-hydroxymyristateの安定化に関わることにより、phcQSの持続性に関与することを明らかにした。平成29年度の結果から、phcQSにより、mBF形成は抑制され、phcQSによって産生が誘導されるラルフラノンJとラルフラノンKは、その作用を阻害していることが明らかとなっている。そこで、ΔlecMのラルフラノンJとラルフラノンKの産生能力を解析したところ、OE1-1株と比較して著しく低下した。すなわち、phcQSにより産生が誘導されるラルフラノンJとラルフラノンKとともに、RS-IILは、mBF形成に直接関与するとともに、phcQSをフィードバック制御することで、mBF形成に間接的にも関わると考えられ、これら主愚なる伝達系を統括的に制御することで、mBF形成の調節を行うと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、「RS-IILによるmBF形成に関わる遺伝子発現制御系の解明」、「RS-IILを介して産生が誘導されるメタボロームライブラリーの構築」を主な研究目標として研究を推進した。その結果、mBF形成に関わるRS-IILを介したシグナル伝達系の概要を明らかにすることができ、その成果を国際誌に形成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
青枯病菌(Ralstonia solanacearum)は、宿主植物の根の細胞間隙へ侵入後、宿主細胞表面にマッシュルーム型バイオフィルム(mBF)を形成する。mBF は、青枯病菌の病原性に不可欠な病原性細胞集団構造物である。mBF の形成には、クオラムセンシングと連動するレクチンRS-IILとラルフラノン化合物を介したシグナル伝達系を必要とする。そのため、これらのシグナル伝達系は、持続性ある青枯病防除の標的となる。本申請研究では、青枯病菌によるmBF 形成に関わるシグナル伝達系の解明を目的とする。平成30年度の「mBF 形成に関わるRS-IILを介したシグナル伝達系の解明」と「mBF 形成に関わるラルフラノン化合物受容により誘導されるシグナル伝達系の解明」を継続するとともに、「mBF 形成に関わるシグナル伝達系の細胞集団構造学的・分子生物学的解明」を開始する。
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