研究課題
2017年度に開発した、トマト植物から抽出した細胞間隙液を培養液としてナノパーコレーター上で培養した青枯病菌細胞集団を走査電子顕微鏡下で観察することにより、青枯病菌によるマッシュルーム型バイオフィルム形成能を質量的に解析しうるモデル実験系を用いて、2018年度に明らかになったマッシュルーム型バイオフィルム形成の時系列的順位に基づき、細胞間隙環境におけるマッシュルーム型バイオフィルム形成時における青枯病菌OE1-1株細胞の形態について時系列的に観察した。マイクロコロニーがら発達したマッシュルーム型バイオフィルムの表面に位置する細胞の多くに、メンブランベヒクルの形成が観察された。さらに、それらの中には、ナノチューブを形成し、隣接した細胞にナノチューブを貫入している細胞が観察された。貫入を受けた細胞の中には、表面が陥没し、さらには崩壊している細胞は観察された。そこで、バイオフィルム形成時の培養液を除菌し、OE1-1株ゲノムDNAの有無を量的PCRにより解析したところ、バイオフィルム形成時の培養液中にゲノムDNAが存在することが明らかとなった。さらに、DNA分解酵素であるDNaase I存在下でOE1-1株のマイクロコロニーからマッシュルーム型バイオフィルムへの発達能は有意に低下した。すなわち、マッシュルーム型バイオフィルム形成時に、青枯病菌細胞では、メンブランベヒクルやナノチューブを形成し、細胞間の情報伝達を行い、それぞれの細胞がマッシュルーム型バイオフィルム形成に必要な機能的分化を行うと考えられた。そして、一部の細胞が崩壊し、その結果、細胞外に分泌されたゲノムDNAをマッシュルーム型バイオフィルム形成に活用すると想定された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では、1-2.RS-IILとラルフラノン化合物のmBF形成における役割の解析2-2.RS-IILによるmBF形成に関わる遺伝子発現制御系の解明3-1.ラルフラノン化合物の受容システムの解明 を行うことになっていたが、計画にはない、マッシュルーム型バイオフィルム形成時の青枯病菌細胞の形態観察を行う技術を2018年度の成果を基に開発することができ、新知見を得ることができたため、青枯病菌細胞の形態観察に注力した。しかし、当初の予定に従い、トランスクリプトーム解析等の分子生物学的解析も継続していることから、最終年度の2020年度に向けて研究は順調に進行していると判断した。
2019年度に進展が遅れた1-2.RS-IILとラルフラノン化合物のmBF形成における役割の解析 2-2.RS-IILによるmBF形成に関わる遺伝子発現制御系の解明 3-1.ラルフラノン化合物の受容システムの解明を進めるとともに、3-2.ラルフラノン化合物受容による mBF 形成 に関わる遺伝子発現制御系の解明 と4.mBF 形成に関わるシグナル伝達系の解明 を推進する。なお、2019年度に、当初、計画していなかった新たな新知見を得ることができたので、これらの新知見を基に、2020年度の研究ははかどると期待している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
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