研究実績の概要 |
・H29年度に作成した簡易風洞を改良し、底面に設置した換気扇で強制換気する構造とした。この風洞はウコンノメイガなどにも有効であった。 ・ノメイガ類約20種の抽出物を網羅的に化学分析したところ、対象とした全ての種から典型的なタイプII成分である(3Z,6Z,9Z)-3,6,9-tricosatriene (T23) 及び(3Z,6Z,9Z)-3,6,9-pentacosatriene (T25)を見いだした。しかし、H30年度中に生物検定を行った種に関しては、これら2物質の雄誘引活性への関与はみられなかった。 ・オリーブなどモクセイ科植物の害虫であるマエアカスカシノメイガ及びヒメシロノメイガの性フェロモン成分を同定した。両種はともに抽出物中に多量のT23及び少量のT25を持つが、これらタイプII成分は誘引に関与しないこと、主要2成分は両種で共通だが、第3成分が異なることを明らかにした。 ・広範な果樹を加害する重要害虫モモノゴマダラノメイガは、T23が誘引源至近で雄誘引活性を向上させることが知られていた。フェロモントラップを使った誘引試験を行ったところ、T23は野外でも誘引活性の向上に大きく寄与する可能性が示された。同属のConogethes plutoがT23を性フェロモンの必須成分としていることから、この属の種は一様にT23を利用している可能性がある。 ・ヨモギエダシャクAscotis serenaria の性フェロモン腺で発現し、フェロモン前駆体の3位の2重結合をエポキシ化する酵素遺伝子のクローニングに成功した。また、バキュロウイルス発現系により本酵素を発現し、そのエポキシ化酵素としての機能を確認した。3位にエポキシ環を導入する本酵素は、9位をエポキシ化するCYP341Bとは別のCYP340ファミリーに属していた。
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