研究課題/領域番号 |
17H03782
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神谷 岳洋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40579439)
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研究分担者 |
山上 睦 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 副主任研究員 (60715499)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カスパリー線 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)カスパリー線の位置を決定する遺伝子を同定し、詳細な機能解析を進めた。(2)シグナル伝達分子である一酸化窒素(NO)がカスパリー線形成のシグナルとして機能していることを明らかにした。以下詳細を記述する。
(1)これまでに、二つのリン酸化酵素がカスパリー線形成、カスパリー線形成に必要なタンパク質CASP1の局在に必要であることを示している。今年度は引き続き変異株の解析を行い、アポプラスト障壁の形成が野生型株より遅くなっていること、イオノームのパターンが野生型株とは異なっていることの二点を見出し、アポプラスト障壁にも異常があることを見出した。また、リン酸化酵素の一つと相互作用する遺伝子の破壊株を調べたところ、カスパリー線に異常を示すことを見出した。すなわち、これらのタンパク質複合体が下流の遺伝子のリン酸化を制御し、カスパリー線形成を制御していると考えらえる。 また、これら二つのリン酸化酵素のうちLRR-RLKに属するタンパク質の詳細な細胞内局在部位の解析を行なったところ、カスパリー線が形成される細胞膜ドメイン(カスパリー線ドメイン)には局在せず、その両側にCASP1を挟むように局在することを明らかにした。
(2)一酸化窒素(NO)がカスパリー線形成に関与していることを偶然見出した。具体的には、NO合成酵素変異株やNO合成阻害剤(c-PTIO)存在下で、カスパリー線は早く形成が始まり(より根端側から形成)ことを見出した。また、アポプラスト障壁の形成をアポプラストのトレーサー(PI)を用いて解析したところ、カスパリー線形成同様、より根端側で形成されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カスパリー線とNOの関係について新たな知見が得られたため。また、カスパリー線形成に必須な新たな遺伝子を見出したため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)リン酸化酵素がCASP1の局在、カスパリー線の形成を制御する機構を明らかにする。具体的には、リン酸化のターゲットとなる候補遺伝子との相互作用(相互作用ドメインの同定を含む)やリン酸化、活性を解析する。
(2)カスパリー線形成のマスターレギュレーターであるMYB36の発現パターンをGFP融合タンパク質を用いて観察する予定である。加えて、どのような外環境がNOによるカスパリー線形成を促進するのか明らかにし、NOによるカスパリー線形成の生理的な意義を解明する。
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