研究実績の概要 |
最終年度は、カスパリー線形成に関与する遺伝子の機能解析を終了した。カスパリー線形成のマスターレギュレーターであるMYB36により、発現が制御される二つの遺伝子(MLRK, ERK1)について以下の解析を行なった。 1. MLRK:前年度までの観察では、カスパリー線形成の足場となるタンパク質であるCASP1の局在や、カスパリー線の形成に異常は見出されていなかった。本年度は、より詳細に解析を進め、MRLKでは地上部の元素濃度が野生型とは異なるパターンを示すことを明らかにした。一方で、アポプラストトレーサーによる実験では明らかな異常が見出せなかったことから、極めて小さな変化がアポプラスト障壁に起きているものと考えられる。また、CASP1の局在への影響についても、次の方法を用いて検証した。MYB36変異株において、内皮特異的に発現するSCRのプロモーターでCASP1を発現した植物(pSCR-CASP1-mCherry/myb36)において、恒常的に発現するユビキチンプロモーターを用いてMLRKを発現した。pSCR-CASP1-mCherry/myb36-1ではmCherryの蛍光が細胞の周囲と細胞内に観察されたが、MRLKを発現させるとカスパリー線形成位置から少し皮層側に局所的に観察された。すなわち、MLRKがCASP1を細胞膜の特定の位置に局在させるのに必要であることを明らかにした。 2. ERK1:今年度は、ERK1がカスパリー線形成にどのように関与しているのかその分子機構を明らかにする実験をおこなった。ERK1は単量体Gタンパク質であるROPと相互作用することが報告されていることから、ROPの破壊株についてカスパリー線の形成を観察した。その結果、二つのROPについてERK1の破壊株と同様のカスパリー線の異常が観察された。また、CASP1の局在についても同様に異常が観察された。
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