研究課題/領域番号 |
17H03783
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
和崎 淳 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00374728)
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研究分担者 |
坪田 博美 広島大学, 理学研究科, 准教授 (10332800)
丸山 隼人 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10633951)
西田 翔 広島大学, 生物圏科学研究科, 特任准教授 (40647781)
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
佐々木 孝行 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (60362985)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 根圏 / 分泌 / クラスター根 / リン / 有機酸 / ホスファターゼ / ルーピン / ヤマモガシ |
研究実績の概要 |
リン酸質肥料の原料は涸渇に瀕しており、持続的な食料生産のためには低リン環境で生育可能な「低リン超耐性植物」の耐性を理解し、そのしくみを活用する必要がある。マメ科ルピナス属やヤマモガシ科等の低リン超耐性植物は、クラスター根を形成して適応するが、低リン環境でのクラスター根形成や有機酸分泌など機能発現のしくみの多くは未解明である。本研究はこれを明らかにするとともに、低リン超耐性植物の農業利用の可能性および生態学的機能を追究することを目的とする。今年度は主に以下の研究を実施した。 シロバナルーピン3品種およびクラスター根を形成しないアオバナルーピンを用いてリンを与えた+P区、与えない-P区で水耕栽培を行い、継時的に形質を評価した。地上部の葉における再転流効率がシロバナルーピンの3品種で高いこと、根分泌物中のホスファターゼ活性およびクエン酸の分泌能はアオバナルーピンおよびシロバナルーピンの品種Luxorで高いことが示された。リンを与えずに土耕栽培したところ、シロバナルーピンのクラスター根圏で難利用性リンの減少が大きく、アオバナルーピンの根圏で小さかった。 アフリカツメガエル卵母細胞の遺伝子発現系を用いて、リン酸欠乏に応答するMATEタイプ蛋白質を発現させて、クエン酸放出などの輸送活性を電気生理学的手法により解析したところ、N-GFP-LaMATEの方がC-GFPよりも発現がみられ、卵母細胞の細胞膜に局在することが示された。 ヤマモガシのクラスター根圏におけるリンの動態を調査したところ、根圏ではpHが低下し、土壌中のリンが非根圏と比較して半分程度まで低下した。特に難溶性有機態リンの減少が顕著であった。さらに、砂耕栽培において個体あたりの有機酸分泌量はクラスター根の形成数と正の相関があることが示された。 以上の結果より、クラスター根が実際の土壌中からのリン吸収に寄与していることが強く支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果として、複数の関連論文の投稿、学会における発表につながっており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度も研究分担者との連携を深めつつさらに研究を進展させる考えである。また、本研究を基課題として、科学研究費補助金(国際共同研究加速)が採択されており、国際共同研究の枠組みを活用しつつ研究を行う。 具体的な研究方策は以下のとおりである。水耕または砂耕で栽培したヤマモガシ科植物を材料としてリン処理を行い、クラスター根と通常根を対象にRNA-seq解析およびメタボローム解析を実施する。これにより、クラスター根においてリン欠乏で特異的に発現する遺伝子の抽出を行う(分担者の西田と共同)。さらに、ヤマモガシ科植物のRNA-seqの結果より有機酸トランスポーター候補を抽出し、機能解析を行う(分担者の佐々木、丸山と共同)。シロバナルーピンの品種間差、ヤマモガシの種間差に基づく比較メタボローム解析を実施する(分担者の俵谷と共同)。 これまでに単離したクエン酸とリンゴ酸のトランスポーター候補についての解析を引き続いて実施し、シロイヌナズナ変異株への相補試験を行うほか、電気生理試験による測定、プロモーター解析、細胞内局在部位解析、発現誘導や機能発現調節の機構についても調査を進める(分担者の佐々木、丸山と共同)。クラスター根を形成するヤマモガシ科植物やシロバナルーピンと根圏を共有した植物の間で、リンを含む他元素一斉分析を行うことで、どのような養分吸収特性が現れるのかについての調査を実施する(分担者の渡部と共同)。オーストラリア原産のヤマモガシ科植物を主な対象として、根圏のメタゲノム解析を行う。これを行うことで、クラスター根を形成する異種同士の根圏環境の類似性や相違点を明らかにする。さらに、ヤマモガシについては周辺植生についてのタキソノーム解析を行いつつ、その周辺植物におけるクラスター根の形成能についての調査を継続する (分担者の坪田と共同)。
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