研究課題
リン酸質肥料の原料は涸渇に瀕しており、持続的な食料生産のためには低リン環境で生育可能な「低リン超耐性植物」の耐性を理解し、そのしくみを活用する必要がある。マメ科ルピナス属やヤマモガシ科等の低リン超耐性植物は、クラスター根(CR)を形成して適応するが、低リン環境でのCR形成や有機酸分泌など機能発現のしくみの多くは未解明である。本研究はこれを明らかにするとともに、低リン超耐性植物の農業利用の可能性および生態学的機能を追究することを目的とする。今年度は主に以下の研究を実施した。アフリカツメガエル卵母細胞の遺伝子発現系を用いて、リン酸欠乏に応答するMATEタイプ蛋白質を発現させて、細胞膜に局在すると推定されるLaMATE-PI1で弱い輸送活性が示唆される結果を得たが、別の輸送体もしくは因子が必要である可能性が考えられた。また、シロバナルーピンのゲノム解読が進んだことから、これまでに単離したリンゴ酸トランスポーター候補のALMT family、クエン酸トランスポーター候補のMATE familyと相同性の高い遺伝子の存在を調査したところ、MATEは合計7個、ALMTは合計13個の遺伝子が見出された。これらについて遺伝子発現量の調査を行い、一部はリン欠乏で発現が高まることが示された。また、ハケアを材料としたRNA-seqの結果からも複数のALMTおよびMATEがリン欠乏条件下で発現誘導されることが示された。CRを形成するシロバナルーピンと形成しないアオバナルーピンの根圏土壌と非根圏土壌におけるリン動態を調査したところ、いずれの植物とも全リンが減少し、その減少はシロバナルーピンで大きく、特に有機態を含む難溶性画分の減少が大きかった。また、この傾向はCR形成種のヤマモガシ根圏でも認められた。このことより、CRの形成によるリン可給化機構がCR形成種におけるリン吸収に重要であることが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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